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【MLB】パドレスが三振奪取率の高い剛腕シース獲得 大谷とのパワー対決が見もの

 

伝家の宝刀、スライダーを武器に3年連続200奪三振のシースがパドレスへ。ドジャースの連覇を止めるべく、大谷の前に立ちはだかることになるか


 パドレスがホワイトソックスの先発右腕ディラン・シース投手をトレードで獲得した。約1カ月前のこのコラムの中で、パドレスは今季はぜいたく税の基準額を下回らせたく、補強資金も限られており、外野手でも先発投手でもインパクトのある選手は取れないだろうと書いたが、AJ・プレラー編成本部長は3月になって、若手有望株3人を含む4対1のトレードで大物を射止めた。

 プレラーは「われわれは勝つことに真剣だし、オフの間からずっとシースをターゲットにしてきた。彼のようなレベルの高い投手を得られてうれしい」と語っている。シースは2022年、14勝8敗、防御率2.20、9回あたり11.1個の三振を奪い、サイ・ヤング賞投票で2位に入った。

 ところが23年は一転7勝9敗、4.58と成績が急降下。それでも最大の武器である高速スライダーは空振り率43.3%と圧倒的で、シーズン214個の三振を奪っている。過去3年連続で200奪三振をマークしたのは、オリオールズのコービン・バーンズ、ブルージェイズのケビン・ガウスマン、フィリーズのアーロン・ノラ、ヤンキースのゲリット・コールだけだ。

 シースの特別な才能を示すのは、MLB公式サイトが新たな指標として発表した「SWORD(剣)」だ。野球を見ていれば、投手が「えげつない」変化球を投げたときに、打者が完全にだまされ、ワンバウンドするようなボール球でも振ってしまうことがある。途中でバットを止められず、中途半端な弱々しい空振り。こういったスイングを「SWORD」だとして広めたのがピッチング忍者こと、ロブ・フリードマン氏だ。

 少年野球を題材にした2006年の映画『がんばれ!ベンチウォーマーズ』の中の、醜いスイングと「斬らないでください、それ(バット)は剣ではありません」のセリフから着想を得た。この「SWORD」をデータ化しようと、MLB公式サイトが23年度の全スイングを集計。それによると一番多く「SWORD」を奪ったのはシースで55度、うち44度はスライダーによるものだった。

 ほかにも平均球速95.6マイルの直球、80.2マイルのナックルカーブ、左打者用に使い、空振り率が50%を超えるチェンジアップも投げる。

 一方で弱点は調子に波があることで、四球やワイルドピッチも多い。「エースのようなピッチングをするかと思うと、五番手のような日もある」とはスカウト評。とはいえまだ28歳でFAの資格を得るまであと2年もあり、年俸も800万ドルと安い。

 春のオープン戦は好調で、3試合に登板、8回1/3を投げ、防御率2・16、14奪三振、2四球。レンジャーズも獲得に動いていたが、パドレスが競り勝っている。

 もしシースが22年のような投球ができれば、パドレスはダルビッシュ有、ジョー・マスグローブ、マイケル・キングと4人もトップクラスの先発投手がそろい、ドジャースにも引けを取らなくなる。

 ちなみに大谷翔平との対戦成績は11打数3安打。2本特大の本塁打を浴びたが、4個の三振も奪った。昨季6月の対戦も1本塁打2三振、「やるか、やられるか」の力勝負は見事だった。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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