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【MLB】メジャー11年目で正遊撃手初挑戦 ベッツが打撃でも絶好調

 

ショートへコンバートされながらも打撃も過去最高に好調なベッツ。狙うは史上2人目の内野、外野でのゴールドグラブ賞だ


 ドジャースのムーキー・ベッツが打ちまくっている。4月17日終了時点でOPS(出塁率+長打率)は1.137(ナ・リーグ1位)、31安打(同1位)、6本塁打(2位)、16四球(1位)、18打点(3位)である。大谷翔平のバットも好調だが、並べているのは安打数だけで、ほかはベッツのほうが少しずつ上だ。

 デーブ・ロバーツ監督は地元紙の取材に「最も顕著なのは、ボール球に手を出さないこと。ストライクゾーンをコントロールできている。その上、逆方向にも打ってフィールドを広く使っている」と称えている。31安打のうち11本が反対方向だ。今季、ベッツがボール球に手を出す確率は18.9%、これはMLB平均の28.4%よりも著しく少ない(大谷は平均に近い27.7%)。絶好調のベッツに対し、相手投手は45%しかストライクゾーンに投げてこないが(MLB平均は48.6%)、ストライクを辛抱強く待ちスイング率は34.4%で、これもMLB平均の47.1%よりも著しく低い。

 そして空振り率はわずか14.4%である(MLB平均は24.8%)。そのためリーグトップの16四球で、出塁率は.470だ。ベッツは2018年のア・リーグMVPで、ほかに16年、20、23年と3度もMVP投票で2位に入っているが、31歳の今季、キャリアで最高のシーズンとなるのかもしれない。

 驚くべきは、ベッツがメジャー11年目で初めて正遊撃手を任され、毎日試合前にそのための練習に汗を流していること。外野で6度ゴールドグラブ賞を受賞している名手だが、チーム事情でオフに二塁手へのコンバートを快諾。キャンプ中に遊撃手予定のギャビン・ラックスが送球難に陥ったため、さらにコンバートされた。正遊撃手は高校生以来だ。

 それでも彼は仕方なくではなく、むしろゴールドグラブレベルの遊撃手になるとモチベーションを高めている。「周囲は疑いの目で見るのかもしれないけど、それって悪くない。チャレンジが楽しくなる。誰が正しかったのか分かるからね」とほほ笑む。そもそもレッドソックス時代に外野手に決まったのはメジャーの遊撃手としては肩が強くないと判断されたからだ。当時の球団の決定に、今になってチャレンジする機会が訪れたというわけだ。

 連日数十個のゴロをさばき、ダブルプレーの練習もこなし、ロバーツ監督は「試合前にこんなに練習する選手を見たことがない」と目を丸くする。隣で守るマックス・マンシー三塁手は、「ムーキーは今、守備で結果を出すために、身体のチューニングに集中して取り組んでいる。それが攻撃面でも最大の効果をもたらしているのではないか」と話している。

 ベースボールサバントの守備指標Outs Above Average (OAA/野手が平均よりどれだけ多くのアウトを奪っているか)では、ここまでは「0」で全体13位。平均レベルだが、これからもっと腕を上げていきたいのだろう。ちなみに外野と内野の両方でゴールドグラブ賞となれば、元エンゼルスのダリン・アースタッド以来2人目。ただしアースタッドは内野では一塁手だった。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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