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【MLB】打撃絶好調の大谷翔平 DH専任で初のMVPの可能性も

 

強打者2人に挟まれる形で打席に立つ大谷。相乗効果で自身の打撃も好調。DH初のMVPの可能性も


 気が早いが、大谷翔平はDH専任で初のMVPの可能性もあるのかもしれない。これまではDHは打撃だけだからと選ばれなかった。史上最強のDH、レッドソックスのデビッド・オルティスも投票で2005年の2位が最高。06年が3位、04年と07年が4位だった。

 マリナーズのエドガー・マルティネスも1995年の3位が最高だった。元エンゼルスの強打者ドン・ベイラーは79年にMVPに選ばれたが、スタメンは外野で97試合、DHで65試合だった。現時点でデータサイト「ファングラフス」のWAR(代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを示す指標)はドジャースのムーキー・ベッツ遊撃手が2.1で1位、大谷は1.8で2位。

 守備の貢献度が高い遊撃手に勝つには、打撃成績で相当上回る必要があり、難しいとは思うが、今の大谷の打撃を見ていると、不可能はないように思えてしまう。現地時間4月23日のナショナルズ戦の9回、マット・バーンズ投手のスプリッターをとらえた打球は打球速度118.7マイル。今季MLBで最も速い打球で、大谷の7年間のMLBキャリアでも最速だった。低い弾道でトップスピンがかかっていたが、それでも飛距離450フィートで球場2階席へ。

 同僚のマックス・マンシーは、「バックスピンで打っていたら、確実に場外だった」と目を丸くしている。本人も「人生の中でトップクラスじゃないかなと思う」と振り返っている。大谷は体格に恵まれているしパワーもケタ外れだが、その上メカニックを磨き、スイングの力を最大限にボールに伝えられるからこれだけ飛ぶのだろう。

 数字が証明している。4月24日終了時点で、95マイル以上のハードヒットの打球は55本でメジャー全体で1位。ハードヒット率64%、バレル率17.4%もトップである。そしてOPS(出塁率+長打率)1.128も頂点に立つ。大きいのはベッツとフレディ・フリーマンと偉大な打者2人に挟まれていること。

 エンゼルス時代はしばしば敬遠されたし、ストライクゾーンでなかなか勝負してもらえず、ボール球に手を出すことも少なくなかった。しかし今はゾーンに集中できる。大谷はデーブ・ロバーツ監督と話し合い、特に走者を得点圏に置いたときのアプローチをアジャストした。

「単純にゾーンが広がっていた。アグレッシブなのが悪いとかではなく、得点圏じゃない場面はしっかりできているので」と大谷。大谷の本塁打は初球(39本)が一番多い。しかしながらカウント別のOPSを比較すると、一番良いのは3-1の2.007で、その次は2-0の1.845、3-0の1.783、1-0の1.294となる。

 初球は1.262だ。この話し合いのあと、打棒爆発。ロバーツ監督は「今の彼はストライクゾーンをコントロールしている。彼がそれをやると、アウトにするのは難しい。左、右の投手、すべての球種に対応でき、フィールド全体に打ち返す。私は毎晩、最高の席でそれを見ている。私もファンになってしまいがちだ」と目を細めていた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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