週刊ベースボールONLINE

MLB最新事情

【MLB】パワー、スピード、強肩 レッズのデラクルーズ遊撃手に注目

 

高身長でありながら両打ちで俊敏な遊撃手のデラクルーズ。今季は打撃も向上しスーパースターへの道を歩み始めた


 レッズのエリー・デラクルーズ遊撃手、22歳は、大谷翔平同様、ケタ外れの身体能力を持ち、ワクワクさせられる特別な野球選手だ。4月8日のブリュワーズ戦では、左打席で飛距離137メートル、バックスクリーンの上部に当てる特大の本塁打を放ったあと、右打席ではランニングホームラン、14秒99の全力疾走だった。

「中堅手がライナーに飛び込んでボールを後ろにそらすのを見た瞬間、これはホームランになると思った」と本人。本拠地グレートアメリカン・ボールパークのスタンドのファンが全員立ち上がって、大声援。「塁を回るとき、球場全体に電気が走ったようで、最高の気分」と最後はヘッドスライディングだった。

 19日のエンゼルス戦では1試合3盗塁と3ランホームラン。2回に右打席でヒットを打ったあと、二盗、三盗を決め、捕手の悪送球を誘い、本塁生還で先制点。8回裏は左打席で、外角低めの95マイルの直球をレフトにダメ押し本塁打。

 27日のレンジャーズ戦では5打数無安打3三振だったが、守備で魅せた。二死三塁のピンチで俊足打者トラビス・ジャンコウスキーが外角直球を叩いた打球は三遊間へ。シフトで二塁ベースの側に立っていたデラクルーズは素早く戻ってバックハンドで処理、そこから強肩で一塁で刺した。

 中継のFOXの実況アナは「これをアウトにできるのはデラクルーズだけかもしれません」と絶叫している。196cmのスイッチヒッターで動きがダイナミック。現地時間4月28日時点で18盗塁は全体1位、7本塁打は6位タイである。

 デビューは昨年6月、最初の2カ月は大暴れだったが、研究され最後の2カ月は失速。最終的に打率.235、13本塁打、35盗塁だった。427打席で144三振、3打席に1度は三振だった。だがレッズは辛抱強く最後まで起用した。

 レッズのニック・クロールGMは、ロイヤルズのJJ.ピッコロGMにアドバイスを求め、同じく大器で1年前にデビューしたボビー・ウィット・ジュニア遊撃手の例に倣ったからだ。ポイントは毎日試合に出すこと。マイナーに落としたり、スイッチヒッターを諦めさせたりしない。遊撃とともに、守備の負担の少ない三塁でも起用したが、外野に回したりはしなかった。

 大器は、自ら学ぶことができる。ウィットは「失敗をすることで学べた、それが大きかった」と言い、1年目の打率.254、20本塁打から、2年目は.276、30本塁打と数字を上げ、三振数も減らした。デラクルーズも1年目の経験をもとに、オフに課題に取り組んだ。打撃ではドミニカ共和国の先輩フアン・ソト(ヤンキース)と一緒に練習、ティー打撃では反対方向に打つことに集中し、選球眼の良いソトに倣って、最後までボールを見極め、バランスの取れた正確なスイングを心掛けた。

 レッズの打撃コーチが母国ドミニカ共和国にまで出かけ練習に付き添った。ここまでその成果は出ていて、エンゼルス戦のような反対方向への本塁打はすでに2本打っており、四球率も昨季の8.2%から15.5%に上がった。高い身体能力に、確実性も加わる。野球場で類を見ない特別な選手になっていきそうだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
MLB最新事情

MLB最新事情

メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング