
ナ・リーグMVP候補、カブスのPCAことクロウ=アームストロング。打撃では19本塁打、長打率.550と結果を残しているが、足を生かした圧倒的な守備範囲でもWARを稼いでいる。攻守走三拍子そろった新たなスターとして、投打で躍動する大谷とのMVP争いに注目が集まっている
記者がMVPは誰かを考えるうえで、WAR(勝利への貢献度を示す総合指標)は重要である。2024年の
大谷翔平はDHだけだったが、それでもデータサイト「ベースボール・リファレンス」では9.2で1位、2位に1.3差をつけていた。二刀流でMVPを獲得したシーズンも21年は2位に1.7差、23年は2位に2.3差だった。
一方、MVPを獲れなかった22年はアーロン・ジャッジに1.2差をつけられた。現時点でナ・リーグのWAR1位は、カブスの中堅手ピート・クロウ=アームストロング(愛称PCA)である。WARは4.3、2位は投手のポール・スキーンズで4.0、大谷は3位タイの3.5だ。打撃だけなら大谷のほうがPCAより上だが、PCAは守備による貢献度が非常に高く、守備だけで1.4ポイントを稼いでいる。ご存じのとおりDHの場合、WARはマイナス評価で大谷はこの分はマイナス0.7である。3位タイのパドレスの
フェルナンド・
タティスも3.5で、守備でプラス0.7である。ちなみにもう一つの主要指標である「ファングラフス」のWARでも、PCAは3.9で大谷の3.8を上回っている。
PCAの守備力は目を見張るものがある。スタットキャストのフィールディング・ラン・バリュー(守備によって防いだ失点を数値化した指標)は「12」でナ・リーグ1位。外野手のOAA(Outs Above Average:平均以上のアウト数)でも「12」で全体1位だ。23歳の若さで身体能力が高い。足の速さは、スプリントスピードが平均29.5フィートで全体16位。さらに打球への反応速度(投球がリリースされてから3秒間で打球方向に進んだ距離)は、平均より4.2フィート(約128センチ)速く、ナ・リーグ外野手で2位にランクされている。送球の強さも平均92.6マイルでナ・リーグ外野手10位(最速は97.5マイル)に位置する。
何より評価されているのは、捕球確率0〜25%の難しい打球で6つのアウトを記録している点であり、これは全体1位だ。このままいけば、PCAはシーズンを通じて守備だけでWARを3ポイント以上稼ぐ可能性がある。
そうなると、大谷がWARで追いつくのは簡単ではない。ただし、PCAは今後、打撃面でやや減速する可能性もある。現在、19本塁打、長打率.550という優れた数字を残しているが、平均打球速度が90.1マイル、平均打球角度が22.9度であることから、長打率は.450前後に落ち着くと予測されているからだ。
決め手は投手復帰した大谷が投手としてどれだけ上積みできるかだろう。サイ・ヤング賞投票で4位に入った22年が投手としてのWARは最高で6.2、一方、2試合登板に終わった60試合の短縮シーズンの20年はマイナス0.4だった。
ところでオールスターゲームのファン投票の第1回中間発表ではPCAは112万6000票を獲得、ナ・リーグ外野手で1位だった。人気も急上昇だ。ただしホームランダービーには出場しないと発言している。「いつかは出るかもしれないが、今は25年シーズンに集中したい」と言う。17日のブリュワーズ戦の19号は452フィートの特大ホームランだったが、「僕には向いていません、あれはまた別のタイプのパワーです。制限時間の中で打ち続けるなんて、自分には無理かも」と説明していた。攻守にフルシーズン活躍し、大谷と最後までMVPの座を争うのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images