
メジャーで最も生え抜きが多いガーディアンズ。その中でラミレスは、看板選手として13年間在籍し、今季は2年連続となる30本塁打、40盗塁を達成した。移籍が激しいMLBの中で生え抜き選手を探してみるのも楽しみ方の一つだ
「ベースボール・アメリカ」誌が、ポストシーズンに進出した12球団の選手獲得手段の内訳を発表している。興味深いのは、トレードの多いメジャーの傾向を反映して、トレードによる獲得選手が最も多かった点だ。トレード組は124人(36.9%)に上り、生え抜きのドラフト指名選手は72人(21.4%)にとどまっている。
特に顕著なのが、レギュラーシーズンで97勝65敗と最高の成績を残したブリュワーズ。スモールマーケット球団のため、大型FA選手に多額の資金を投じることはなく、その代わりにトレード獲得選手が15人と最多。クリスチャン・イエリッチのようにすでに実績を上げていた選手を獲得した例もあるが、多くはフレディ・
ペラルタ(年俸810万ドル)、トレバー・メギル(194万ドル)のように獲得当時は注目されていなかったものの、のちに主力戦力へと成長したケースだ。
ドラフト指名による生え抜き選手はわずか6人。それでもチームの総サラリーを1億2167万ドル(全体22位)に抑えながら勝利を積み重ねられたのは、巧みなトレード戦略の賜物だ。マリナーズもトレード獲得選手が14人と多い。チームサラリー総額は1億6451万ドルで全体15位。
同球団はもともと優れた投手陣を有していたため、課題は打撃陣の補強だった。高額の資金を要するオフのFA市場ではなく、シーズン中のトレードでジョシュ・ネイラーやエウヘニオ・
スアレスを獲得。ランディ・アロザレーナもトレード組である。彼らの年俸は1000万ドル〜1500万ドルと安くはないが、過度に高いわけでもない。フリオ・
ロドリゲスやカル・ローリーといった生え抜きがチームの核となり、今季はチームOPSが.740で10位、チーム本塁打数は238本で3位と攻撃力が向上した。結果、90勝72敗でア・リーグ西地区を制し、ポストシーズンには第2シードで臨んでいる。
一方、最も生え抜き選手が多いのはガーディアンズで18人もいる。他球団はいずれも13人以下だ。エースのギャビン・ウィリアムズ、オールスターのスティーブン・クワン、看板選手ホセ・ラミレスが代表格だ。チームのドラフト戦略の巧みさを示していると言えるだろう。ちなみにガーディアンズ出身で他球団に移籍後も活躍を続ける選手も多くいて、今年のポストシーズンでガーディアンズ出身選手は、生え抜きも加えると27人。これに次ぐのはドジャースで、23人である。
ちなみに、ドジャースのロースター構成はトレード組が32.1%、FA獲得が25%、ドラフト指名が17.9%、国際選手も17.9%となっている。ドジャースといえば資金力があり、
大谷翔平やブレーク・スネルをFAで、
山本由伸を国際契約で獲得した。
さらにドラフト巧者としても有名。それでもチーム構成で最も多いのはトレード獲得の選手たちだ。野手ではムーキー・ベッツ、トミー・エドマン、アレックス・
コール、ベン・ロートベットらがその代表であり、投手ではアレックス・ベシア、マイケル・コペック、アンソニー・バンダらが名を連ねる。球団のプロスカウトが入念に調査を行い、チームカラーに合った人材を的確に見極めていることの証しなのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images