『事実は小説より奇なり』とは、まさに。ただ、昨季途中、左腕を襲った突然の病魔がもたらしたのは、決してマイナスなことばかりではない。これまで以上に“投げること”と向き合い、高みを目指して真摯(しんし)に取り組む姿は、首脳陣の目に留まった。2023年シーズンのスタートを託された左腕は今季、昨季とはまた違う“ターニングポイント”を迎えるに違いない。 取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭 本当の意味でのスタート
ソフトバンクの2023年シーズンは、3月31日に本拠地・PayPayドームで行われるロッテ戦からスタートする。そこで開幕投手を務めるのが、プロ入り4年目を迎える大関友久だ。育成出身選手としては、千賀滉大(現メッツ)、石川柊太に続く3人目の大役。昨季は8月に精巣がんの疑いで腫瘍摘出手術、思わぬ離脱を強いられた左腕だが、それでもシーズン終盤に復帰。その強さ、たくましさは、今季もチームを支えていく。 ──春季キャンプも終わり、オープン戦に入りました。開幕投手が決まってから、自身の中で変化はありましたか。
大関 ひとつ落ち着いて、いつものペースで練習できているので、順調かなと思います。開幕投手が決まってからは、より結果を重視するように、というか、チームのために準備しようという気持ちが強くなりました。
──チームには過去に開幕投手を務めた先輩方もいます。何かアドバイスはありましたか。
大関 石川さんだったり、巨(
東浜巨)さん、和田(
和田毅)さんに、いろいろと聞いたりもしたんですけど、3人それぞれに考え方があって。特に和田さんからは、開幕までの調整の仕方だったり、気の持ち方というところなどを教えていただきました。その中で「周りは気にしなくていいから」と。いろいろと期待を求めて、例えばオープン戦の結果に関しても一喜一憂でいろいろ言われたりもするかもしれないけど、自分が開幕に合わせて集中すればいいと思うよ、というふうに言っていただきましたね。
──大関投手自身が今季を迎えるにあたり、開幕投手を意識したのはいつごろからですか。
大関 昨年の秋から、キャンプが終わって冬、自分一人でトレーニングという中で一つ、頭の中にあったものではありましたね。
──なぜ意識したのでしょうか。
大関 いい成績を残す、いいピッチングをする、というのは、チームの柱としての大事な一つの要素だと思います。そういう意味を込めて、ですね。もちろん、まだそこまではいけてないんですけど、チームを引っ張っていくような存在、まずはそこを目指す中で「開幕投手を」という思いがありました。
──開幕投手も念頭に置きつつ、オフシーズンはどのようなテーマを持って取り組んでこられたのですか。
大関 開幕投手を一つ視野に入れた中で意識してきたのは、『圧倒的なピッチングをしたい』というところです。2021年のシーズン途中に支配下になって、昨季は先発ローテーションで回って、と順調に来ていたので、ここからは段階を踏んでというよりは、本領を発揮するときだなと。本当の意味でのスタートの年。自分のやりたいことの始まる年だなという気持ちでした。
──「自分のやりたいこと」とは具体的には?
大関 言葉で表現するのが難しいんですけど・・・
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