
今治西との一戦で一躍全国区の投手に
2012年夏の甲子園1回戦、桐光学園(神奈川)対今治西(愛媛)戦で1人の2年生左腕がとてつもない記録を打ち立てた。松井裕樹、当時16歳。宝刀スライダーを武器に初回からバッタバッタと三振を量産。大会新記録の22奪三振に加え、10者連続三振も樹立。大会前は「好投手の1人」にすぎなかった男が、一気にスターダムに躍り出た。全国の野球ファンに衝撃を与え、プロへの道を開いた松井裕樹のあの夏を回想してみたい。 写真=BBM 「甲子園で自分が表現できた夏でした」
2012年夏の甲子園、桐光学園の2年生エースだった松井裕樹は全国の注目を一身に集めていた。2年経った今、プロになって振り返る甲子園とは何か――。意外な言葉が返ってきた。
「よく聞かれるんですけど、特に何って言うのはないんですよね。体調も調子も良かった。いい結果が出た大会だったので、もちろん自信にはなりました。甲子園で自分が表現できたという感じです」
あの日、聖地は異様な空気に包まれた。8月9日の愛媛の強豪・今治西との1回戦。8回を終えて奪三振は19個を数えていた。すでに大会記録に並んでいる。桐光学園の2年生左腕はそれでも表情を変えることなく平常心でいた。9回無死、またも相手打者のバットが空を切る。新記録達成にススタンドからは大きなどよめきと拍手が巻き起こった。
なおも「松井劇場」は、終わらない。続く打者も126キロのスライダーで見逃し三振。これで圧巻の10者連続。二死から三番打者に一、二塁間を破られたが、最後は四番打者のバットが、115キロのキレのあるカーブに空を切った。10者連続を含む1試合22奪三振。9回の記録としてはともに春夏を通じて甲子園の新記録。16歳のサウスポーが歴史を塗り替える大仕事をやってのけた。
試合後、偉業を成し遂げた16歳は初々しい表情で大粒の汗をぬぐった・・・
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