新人王を獲得したルーキーイヤーは乗り越えた大きな苦難の分だけ、大きな喜びと収穫を得た。想像を絶するプレッシャーを背負い、心身を蝕まれながらも決して逃げなかったのは「14」を背負う者のプライドがあるからだ。広島の次世代エースに流れる赤い血潮の熱に触れる。 取材・構成=菊池仁志 写真=毛受亮介 勝てなかった時期の積み重ねが導いたCSの好投
──新人王受賞のスピーチの際、OBの
津田恒実さん(故人)のお名前を挙げて、「いつか追い抜けるように」と語った言葉が印象的でした。
大瀬良 同じ背番号14を着けていることで、シーズン中も津田さんの名前と一緒に語っていただく機会がすごく多かったんです。それにカープファンにとって14番は津田さんの背番号で、とても特別なもの。それは入団の際に背番号の話をいただいたときからずっと感じていたことなので、津田さんも獲った新人王を獲りたいと思って、1年間やってきました。現役時代の成績を見たりしながら意識している方です。
──1年目を戦う上で、14番を着けていることが心の支えになったことはありませんでしたか。
大瀬良 交流戦に入って、なかなか勝てなくて、打たれることもすごく多くて、「また打たれるんじゃないかな」って思うことがその時期は結構ありました。そういうときに津田さんの言葉にある「弱気は最大の敵」が頭の中に浮かんできて、そういうときこそ気持ちを強く持って立ち向かっていかないといけないんだと、励みになっていました。

新人年となる14年を迎えるにあたり、絵馬に「新人王」と祈願したとおりにタイトルを獲得。右はパ・リーグ新人王の石川(ロッテ)
──立ち向かっていく気持ちが大切だと痛感させられたシーズンだったと思います。
大瀬良 そうですね。14を着けている以上、今後もそういう気持ちを忘れずに持ち続けていきたいです。
──シーズンを通して先発ローテーションを守り、10勝8敗、防御率4.05の成績でした。良かったこと、つらかったことを比率で表すとするとどうなりますか。
大瀬良 五分五分かな。ただ、交流戦くらいの時期のきつさは野球人生で経験したことがなかったしんどさだったので、そのことが強烈に印象に残っています。
──まずは良かったと言える点から教えてください。
大瀬良 勝ったときの喜びの大きさですね。大学時代は勝って当たり前という環境で野球をやっていたんですけど、もちろんプロではそんなことはないし、一つ勝つことの大変さを知った中での1勝の重み、喜びというのは本当にすごく大きくて、その日は眠れないくらい興奮したりしていました。喜びとかうれしさを感じた部分はそこです。
──初勝利から5連勝を飾りましたが、交流戦を境に長く白星がつかない時期がありました。終盤戦の勝利こそ、重みのあるものだったと思います。
大瀬良 5連勝の時期は負けの悔しさ、打たれることの怖さを全然分からない、知らない状態でした。最初の黒星も7回3失点(4月9日、対
巨人・東京ドーム)で悪い結果じゃなく、最低限の仕事はできていたんで、そのころはまだ勢いというか、怖いもの知らずでバンバンいっていた感じでしたね。その後、1回で10点取られて・・・
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