「優勝は自分がやり残したこと。若い選手に経験させてあげられていないから」と語る鳥谷
阪神のグラウンドの中、ベンチの中、今まで見たことのない笑顔がある。キャプテン・鳥谷敬だ。職人肌として黙々とプレーをするスタイルだったが、今年は「夢」を断ち切り、チームの優勝のためにまい進する。そのためには何が必要なのか――。開幕直前、球団創設80周年を迎える阪神のリーダーの心境とは!? 文=佐井陽介(日刊スポーツ新聞社) 写真=高塩 隆、松村真行 日本でしかつかめない夢へ
薄暗い京セラドームの駐車場。愛車に乗り込む直前、鳥谷敬はニヤリと笑った。3月21日、
オリックスとのオープン戦で右腕
バリントンから2安打を放った直後のことだ。シーズン開幕まで1週間を切った心境を問われ、「不安ですよ」とうそぶいた。もちろん、この言葉をうのみにする記者はいない。誰の目にも調整は順調そのもの、なのだから。
2カ月近く前の2月上旬。阪軍キャンプ地の沖縄・宜野座村野球場には毎日、鳥谷のスマイルと掛け声があった。かつてのクールな印象が吹き飛ぶほど時には励まし、時には突っ込み、声を張り上げて若虎に伸び伸びとした環境を提供した。
「自分は内野で一番オジサンだったから。一番年上が声を出せば盛り上がるかなと思って」。
チームの優勝のために、キャンプインから笑顔で若手を励まし、チームを盛り上げている
人気俳優にも負けない爽やかな笑顔の裏には、並々ならぬ覚悟が隠されていた。
ソフトバンクとの日本シリーズに敗れた直後の14年11月、海外FA権を行使した。早大時代から抱き続けた長年の夢、メジャー挑戦を視野に入れての宣言。約2カ月間悩み抜き、15年1月上旬に導き出した結論は阪神残留だった。水面下ではメジャー契約のオファーも存在した中での決断。日本でしかつかめない夢を、どうしても消し去れなかった。
「優勝は自分がやり残したことでもある。自分は若いとき、ベテランの方々に優勝させてもらったのに、自分はそれを若い選手に経験させてあげられていないから」
プロ2年目の05年にリーグ制覇して以来、美酒から遠ざかる。主将4年目、キャンプでは例年以上に「チームリーダー」という立場にも時間を費やした・・・
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