2年時から大学日本代表に選出。同年からジャパンを率いる明大・善波達也監督は「2年後」を見据えての抜てきだった。指揮官の“親心”を本人も十分、自覚しており努力を続けてきた。現役を引退するまで、この男に「満足」という言葉はない。 取材・文=岡本朋祐 写真=矢野寿明 
明大の捕手では異例とも言える1年秋からレギュラー。3度のリーグ優勝を経験も、リーダーシップ抜群であるこの男なくして考えられない
相談なしで決めた異例の主将選出
4月11日の東大との開幕ゲーム(対東大)を前にして、
坂本誠志郎は眠れない日々が続いている。秋春連覇がかかる今シーズン、主将はチームを一歩引いた目で見てしまうという。
「良くなったな、と思うところがあったとしても、ささいなダメな部分が目に入ると見逃せなくなってしまう。畔上(翔、日大三=法大主将)や河原(右京=早大主将)らが、どんな形でチームを引っ張っているのかも気になる。常にまだまだ甘い、チーム力が足りないと言い聞かせています」
学生の中に一人だけ社会人がいる印象を抱く。明大にはOB・
高田繁氏(現
DeNA・GM)の持つ、東京六大学安打記録(127本)の更新がかかる
高山俊(4年・日大三、昨秋までに100本)がいる。坂本は言う。
「自分は考えて、考えて動くタイプですが、高山は正反対。良い意味で大雑把で、物事を簡単に解釈する。それで野球で結果を残すんですから、うらやましいですよ(苦笑)」
2004年からコーチ、08年から母校・明大を率いる善波達也監督は現役時代は捕手。エース・
竹田光訓(元大洋)とバッテリーを組み、主砲には
広澤克実(元
ヤクルトほか)がいた。4年秋には主将としてリーグ制覇。監督就任から7年14シーズンで6度優勝へ導いた実績とともに、島岡吉郎元監督の指導スタイルを継ぐ“人間力”へも力を注いでいる。
つまり、グラウンドはもちろんのこと、合宿・学校生活にも目を光らす。13年から今夏までは大学日本代表監督、そして、今年2月からは全日本大学野球連盟監督会会長の要職も兼任。大学球界における人望の厚さも“御大”を継承しているわけだ。
選手評価に手厳しい指揮官だが、坂本に全幅の信頼を置く。選手層の厚い明大で1年秋から定位置をつかみ、2年時からは大学日本代表メンバーの常連。最終学年の主将就任は“既定路線”と見ていたが、選出までの経緯は想像をはるかに超えていた。
「最終的に私が判断するんですが、過去にはスタッフ、マネジャー、下級生まで聞くこともありました。人と相談しないで決めたのは初めてです。観察力、人をよく見ている。良い素直さがあり、頑固さもあり、人としてのバランスの良さがある」(善波監督)
硬式経験者への反骨心が成長の糧
内野手だった坂本が捕手に転向したのは小学校3年冬。打撃練習の際に捕手に入っていると・・・
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