超一流のメジャー・リーガーながら1995年、98年にロッテでプレーしたフリオ・フランコ。そのプロフェッショナルな姿勢でもファンの心に深く焼きついた。現在56歳ながら、石川の地でいまなおプレーする男を直撃した。
取材・構成=小林光男、写真=BBM

ファンが試合に参加、美しい球場も印象深い

19試合に出場して60打数18安打、0本塁打、15打点、打率.300(6月7日現在)。独立リーグと言えど、56歳が残す数字ではないだろう。しかし、間近で見ると、その理由が分かる気がする。シェイプされた体、そして全体から発散されるオーラ。バットの先端を投手に向ける、あの独特な構えも健在だ。まさに“生ける伝説”であるBCリーグ・石川のフリオ・フランコ選手兼任監督。メジャー・リーグでも通算2586安打をマークした超一流選手だ。1995年、98年とロッテのユニフォームを着たが、まずは日本でプレーしていた時代に関して聞いてみた。

――もともとはレンジャーズ時代の90年のオフ、日米野球で来日して当時西武の秋山幸二、清原和博に強烈な印象を受けて「いつかアキヤマ、キヨハラとプレーしたい」と願うようになったそうですね。

フランコ　そうだね、それは事実だ。彼らも絶頂期で、本当に素晴らしいプレーヤーだったよ。

――結局、95年バレンタイン監督が指揮を執るロッテに入団しましたが、どのような思い出が?

フランコ　たくさんあるけど、まずはファンがゲームに参加してくれること。それに、スタジアムも美しくて印象に残っている。でも、一番は日本でプレーする楽しみ、喜びを感じたことだね。本当に日本にいるときは落ち着いてプレーすることができた。平和な環境が心の安寧をもたらしてくれたんだ。日本は非常に安全。子どもと一緒に電車に乗ったり、散歩ができたりする日本が大好きだった。そうそう、スタジアムまで電車で通っていたけど、そこでもファンと交流しながら、非常にいい時間を過ごせたよ。

――嫌な思いをしたことがない。

フランコ　日本人の人間性というか、例えば年上を敬う、道端にゴミを捨てない。そこが素晴らしい。ロッテの首脳陣、選手もファンもしっかりと自分のことを手厚くもてなして扱ってくれたのも印象深いね。

――それでは試合で印象に残ったことは?

フランコ　その人間性が表れていたのか分からないが、日本人はフレンドリーにプレーし過ぎているように思えたね。例えば走者が、そこまでダブルプレーをつぶすようなスライディングをしないとか。まあ、選手ではイチロー(当時オリックス、現マーリンズ)は見た瞬間、メジャー・リーグでもプレーできると思ったね。

――イチロー選手とは95年、首位打者を争いました。

フランコ　本当に才能豊かだった。実際、その後、メジャーへ行って、そこでも結果を残しているだろ。現在の日本でもメジャーで活躍できる選手は数多くいるよ。その筆頭はオオタニ(大谷翔平)だろう。

――95年、チームを2位に引き上げる原動力となりましたが、当時のエース・小宮山悟氏とは現在も交流があるそうですね。

フランコ　彼がメジャーのユニフォームを着て、アメリカで再会することができたのも良かった。ワタシが今回、来日したときもホテルまで来てくれて、挨拶を交わせたのはうれしかったよ。コミヤマは本当のプロフェッショナルだ。スタジアムの中でもそうだが、スタジアム外でもファンとの接し方もベストだし、何よりも自分自身をしっかりと律して生活していたからね。

緊張する場面こそ能力を引き上げる

　期せずして、話はプロフェッショナル論に移った。レンジャーズ時代の91年に首位打者を獲得し、2005年にはメジャー史上最年長(46歳カ月)満塁本塁打をマーク。さらに56歳となるいまも現役としてユニフォームを着続けている男はまさに匠のプロフェッショナル論を持っており、さらに野球というゲームに対するとらえ方も独自のものだ。

――あなたはお酒を飲まないし、タバコも吸わない。徹底した自己管理をしていることでも知られていますが、それも野球のため?

フランコ　それはベースボールのためというより、自分自身の人生を考えた結果だ。人生をきちんとコントロールするためには、どのようにすべきか? そうすると、例えばパーティーに行くことを避ける、という選択になるね。

――そういった姿勢も非常にプロフェッショナルに映りますが、あなたにとってプロとは?

フランコ　簡単に言えばベースボールチームと契約すればプロフェッショナルになれる。ただ、当然それだけではダメだ。本当のプロフェッショナルは・・・