「お前の肩では一軍のキャッチャーは無理」と烙印
前々号の話の続きである。
プロ入り1年目のオフ、契約更改だと思って行った先で、課長からクビを宣告されてしまった。しかし、田舎に帰ったところで仕事のあてもない。私は一人、寮で途方に暮れた。
そして翌日、再び課長に会いに行き、頭を下げた。
「2年も3年も、とは言いません。もう1年だけ置いていただけませんか。もちろん課長さんたちの目はプロの目でしょうが、試合にもろくすっぽ出ていないのにクビと言われても、自分としては納得できません」
私は必死だった。
「試合に出るチャンスをください。それでおっしゃるとおり、プロでは無理だと実感したら、そこで辞めて帰りますから」
ついでに、「給料もいりません」と、心にもないことまで口走ってしまった。
だから、というわけではなかろうが、課長は「ちょっと待っとれ」と言って、部屋を出て行った。しょぼんとして待っていると、10分ほどして課長が戻ってきた。
「よ~し、分かった。もう1年面倒みたろ」
「本当ですか!」
私は思わず言った。
「じゃ、給料は少しぐらい上げてもらえますか?」
「お前、アホか。なんてムシのいいこと言ってんだ。なんにもしてないヤツの給料が上げるわけないだろう。それが、実力の世界だ」
それで2年間、私の月給は7千円ぽっちだった。背広一丁買えやしない。
なんとかクビはつながったものの、その後、私はさらなる転機を迎えることになる・・・
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