巨人コンプレックスに打ち勝ったヤクルト
クライマックスシリーズ(CS)直前、嫌なニュースが飛び込んできた。
巨人選手の野球賭博問題だ。報道されているように、巨人軍の選手が野球賭博にかかわったことが事実だとしたら、これはもう致命的。該当選手の解雇は当然だろう。仲間を裏切り、チームを裏切ったわけだから。
しかし問題は、それだけで済むかということだ。1969年発覚した『黒い霧事件』のときは、複数の追放者を出した西鉄・
中西太監督が辞任した。選手を管理、育成できなかった、正しい方向へ導くことができなかったのが、その理由。こうした不祥事は、球団の責任問題にもなってくる。
さて、この原稿を執筆中、パの
ソフトバンクに続き、セは
ヤクルトがCSを勝ち抜き、日本シリーズ進出を決めた。実のところ、私はファイナルステージ前、セは巨人有利と見ていた。巨人は、特別なチームだ。巨人と対戦するチームの精神状態は、それ以外のチームと対戦するときとは違ってくる。巨人相手だと、どうしても意識過剰になってしまう。いわゆる“巨人コンプレックス”である。
とりわけ巨人は、マスコミの数からして違う。新聞もテレビも、記者、カメラマンはすべて巨人側ベンチに集まっている。記者たちが監督を囲むと、幾重にも輪ができる。こちらは来ても、ちらほら。あの雰囲気で、早くも負けたような気になってしまう。
60年代終盤から70年代、パを制してきた阪急ですら、西本(幸雄)監督の時代には巨人に一度も勝てなかった。当時、二番を打っていた大熊(忠義)がよく言っていたものだ。「シリーズ前の練習で、巨人のあのユニフォームを見ただけで、勝てる気がしなかった」と。マスコミ、ファン、すべてを味方につけた巨人には、無形の力がある。ましてやわれわれの時代、巨人にはONがいた。
ヤクルト・真中(満)監督は、1年生。そういった無形の力に、相当圧力をかけられるだろうと思っていた。しかしファイナルステージ前、真中は「優勝したとはいっても、ウチはチャレンジャー」と口にしていたそうだ。そこが偉かった。

チャレンジャー精神でCSを勝ち抜いた真中監督率いるヤクルト。果たして、日本シリーズはどうか?[写真=高塩隆]
日本シリーズまで来れば監督の選手操縦は楽になる
そうした心理面で短期決戦を見てみよう・・・
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