今季に引退を表明した名選手に話を聞く“惜別球人”が今年もスタート。まずは日本一、世界一に輝いた正捕手としてだけではなく、引退セレモニーではステージ上でロッテの応援歌を熱唱するなど、あらゆる方法でファンを楽しませ続けた里崎智也に、数々の名場面で彩られた16年間の現役生活を振り返ってもらった。 取材・構成=吉見淳司 写真=高塩隆、BBM 満点の引退
──引退して1カ月がたちましたが、実感はありますか。
里崎 特にないですけど、肩の荷が下りて楽な感じで生活できています。現役のときは毎朝、「今日はどこまでできるかな」という心配要素があったので、その点は気楽ですね。
──引退会見では涙もありましたが、ラストゲームでは笑顔が印象的でした。
里崎 会見で人から質問されると、その場面を「ああ、こんなこともあったな」ってイメージしちゃいますからね。引退試合はもっと泣くかなと思ったけど全然でした。
──実際に引退を決められたのはいつごろですか。
里崎 9月に入ってからですね。左ヒザの故障が長引いてしまって、回復も遅かった。このまま続けたとしてもトップクラスではできないし、ムダに長く続けるほど、次のステージに進むのが遅くなるじゃないですか。人生はまだ半分あるんだから、ひとつのことを長く続けるよりも、どこかで踏ん切りをつけようという考えはずっとありました。
──打撃には支障がなかったそうですが、今年は打者に専念し、来季に再び捕手で勝負という気持ちは。
里崎 そういう中途半端な考え方はなかったですね。やっぱりやるからには守りも含めてだと思っていたので。やり切ったと思っていたし、やり残したこともなかったですから、ここ数年はいつやめてもいいと思っていました。
──引退試合では2打席連続三振でした。
里崎 もちろん欲を言えば打てるに越したことはなかったですけど、それも特に悔いはないです。
──直前まで練習はマシン打撃のみ。打てていたら革命的でしたね。
里崎 やっぱりダメでした(苦笑)。
──練習といえば、試合後のライブもぶっつけ本番でした。
里崎 歌手でもないのに練習しないですよ(苦笑)。楽しければいいんですもん。うまく歌おうとかはまったくなかったですね。ファンの人が盛り上がってくれればと思って。あんなセレモニーは二度とないでしょうね。そこまで勇気のあるヤツはいないでしょう。

現役最後のパフォーマンスは前代未聞の“場外ライブ”。1万7500人の観衆が現地で満喫した
──あの1日に自身で点数をつけるとしたら。
里崎 それはもう満点でしょう。やり尽くしましたね。
いいときに恵まれた
──入団前年の98年にロッテはプロ野球記録となる18連敗を喫していました。入団前のチームの印象は。
里崎 まったくないですね。僕、もともとプロ野球の勝敗とかチームに興味があったわけではないんですよ。今みたいにBSやCSで野球の試合を中継する時代でもなかったですから、ロッテの選手なんて誰がいるかもよく分かっていなかったですね。連敗記録は知っていましたけど・・・
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