既成概念にとらわれない若きリーダーの下で、プライドを取り戻そうともがくセ
阪神の
金本知憲新監督に続き、
巨人も
高橋由伸の監督就任が決まった。
DeNAは
アレックス・ラミレスが抜てきされ、新しいリーダーはいずれもかつての四番打者。これでセ・リーグの監督は、
ヤクルトの
真中満、
広島の
緒方孝市、
中日の
谷繁元信と、全員が野手出身の40代とフレッシュな顔ぶれとなった。
秋季キャンプに参加した金本監督は、まずは打撃練習を注視した。
大和、
上本博紀らを例に挙げ、「うまく打とうとして、振れなくなっている」と指摘。全員に強いスイングを要求し、「バットを振り切ること」をテーマにした意識改革に乗り出している。
阪神は
掛布雅之、
岡田彰布らを擁し、セ記録の219本塁打をマークした1985年以降、金本監督の現役時代を除けば、30本塁打を記録した日本人選手がいない。「これは異常」と金本監督はため息をつくが、リストワークで“ボールに合わせる打撃”がまかり通っていたのは、阪神だけではない。広島の緒方監督、巨人の高橋監督も、優勝を逃したチームの立て直しとして「力強いスイングによる打撃力強化」を目標として掲げている。
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阪神を新たに率いる金本監督。指導にも力が入っている[写真=内田孝治]
スイングの重要性を示したのが、パ・リーグ覇者の
ソフトバンクが混戦のセ・リーグを制したヤクルトを4勝1敗で下した日本シリーズだ。戦前から「ソフトバンク優位」がささやかれてはいたが、ヤクルトは下馬評を覆すことはできなかった。苦戦続きだった交流戦に続き、またもパの王者に力の差を見せ付けられた形となった。
バランスの取れた投手力もそうだが、ヤクルトのベンチが最も痛感したのが攻撃力の差。バッテリーを揺さぶる
福田秀平、
明石健志の一、二番に続き、
柳田悠岐、
李大浩、
松田宣浩ら強力な主軸が控える。クリーンアップ以下も
長谷川勇也、
中村晃、
今宮健太らパワフルな好打者が控える。どこからでも点をもぎ取れる打線は圧巻だった。ヤクルトの四番を務めた
畠山和洋は「実力の差を感じた。こんなに強いチームが日本にあったのかと再認識させられた」と脱帽した。
ヤクルトは3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーをクリアした
山田哲人をはじめ、首位打者の
川端慎吾、打点王の畠山ら打撃部門のタイトルホルダーがひしめく「打」のチーム。山田が3打席連続本塁打を放つなど一矢報いたが、それでもシリーズ全体ではソフトバンクの破壊力が際立った。
パは比較的球場が広く、150キロ超の速球派も多い。打者はそのパワーに負けないスイングをしなければ対応できない。一方のセは、コースを巧みに突くコントロールのいい投手が多く、センター中心に確実にミートする打撃が近年の傾向。だが、そのスタイルの激突では勝てないという現実が、またも目の前に突き付けられた。
勝つためにどうすればいいのか。何かをしなければ、現状は打破できない。セの若い指導者たちは、変革が必要なことを分かっている。辛酸をなめたセが、既成概念にとらわれない若きリーダーの下で、プライドを取り戻そうともがいている。