6月11日のロッテ戦(QVCマリン)で史上45人目の2000安打達成者となった和田一浩。42歳11カ月での金字塔到達は歴代最年長となる長い道のりだった。しかしまだ、その闘志は衰えを知らない。新たな決意を宿す打撃職人に話を聞いた。 取材・構成=吉見淳司、写真=BBM 未練のあった外野手転向
昨年は2000安打まであと15本と迫った8月5日の広島戦(ナゴヤドーム)で死球により右手首を骨折。その後のシーズンを棒に振り、挽回を誓った今季も、ヒザの故障により開幕から出遅れた。それでも心を折ることなく調整を続け、5月26日(対ソフトバンク、ナゴヤドーム)の復帰から14試合目で、歓喜の瞬間を迎えた。 ――2000安打達成おめでとうございます。会見では「あまり実感がない」と話していましたが、時間がたった現在はいかがでしょうか。
和田 まだ、あまり湧いていません。たくさんの方に「おめでとう」と言葉をかけていただいたので、そういう点での実感はありますけど、自分で成し遂げた感覚はあまりないですね。
――6月11日のロッテ戦(QVCマリン)で、ご家族の目の前での達成となりました。ご家族はいつから球場に来ていたのでしょうか。
和田 千葉の初め(9日)から来ていました。最初からその週は、という話をしていたので、もし千葉で達成できなかったら、次の
楽天戦(コボスタ宮城)にも来てもらう予定でした。
――9日のロッテ戦が始まる時点で通算1995安打。千葉3連戦での達成は厳しいと思っていました。
和田 もちろん、自分でも簡単に達成できるものではないと覚悟していたので、仙台まで行く可能性も十分にあると思っていました。ヘタをすればその週には打てないのでは、とも考えていました。やっぱり、ヒット1本打つことがなかなか大変だったりするケースがある。出るときはポンポンと出ますし、出ないときはなかなか出ない。5本という数字はすごく微妙だと思いながら遠征に出発しましたね。
――11日の試合は2000安打まで残り2本として迎え、第1打席の満塁機に2点左前適時打を放ってリーチをかけました。次の打席に向かうまでの意識は普段と違いましたか。
和田 ほとんど変わらなかったですね。試合前から1打席目がすごく大事だと考えていて、2死満塁という状況で打席に入って、たまたまヒットという形になったんですけど、そこで自分の中ではちょっと余裕が出来ていました。それほど2000安打ということは考えずに、試合にうまく入っていけました。1打席目で結果が出ると精神的なプラスが大きい。リラックスして次の打席に向かうことができましたね。
――2回に早くも第2打席が回り、左翼線に2000本目のヒットを放ちました。すかさず二塁を狙ったのが印象的でした。
和田 普通に行けば二塁打コースだったので、疑うことなく二塁に行こうとしたんですけど、(左翼手の
角中勝也に)うまくクッションに入られてしまいましたね(苦笑)。
――感慨に浸るよりも先に、すかさず次のプレーに意識がいっていましたね。
和田 基本的には試合の流れの中で、たまたまそれが2000安打だっただけのことですから。やっぱり試合をしっかりやらなければいけないということが大前提なので。
―― 一塁に戻ると、ロッテファンからも祝福されました。
和田 球場全体から拍手をもらえましたね。野球選手冥利に尽きるなと思いましたし、そういう記録を見せられたことによってロッテのファンにも喜んでもらえたのならありがたいですね。
――先発は
大野雄大投手でしたが、9回完封勝利を飾りました。試合後には「絶対に負けられないと思っていた」と語っていましたが。
和田 試合前のアップのときに話をしていたんですよね。「今日、決めるよ」と言ったら、彼は「じゃあ、僕は絶対に抑えます」と言ってくれました。彼は今、すごく力がありますし、チームのエースですからね。勝ち試合で決められて良かったです。
――自分が記録を達成しても、チームが勝たなければ素直に喜べない。
和田 もちろん喜べません。あの試合は勝った喜びと、打った喜びを一緒に味わえたので、素直にうれしい1試合になりました。
――翌日からの仙台は、東北福祉大で4年間を過ごした思い出の場所でした。
和田 記念のボールを持って、亡くなられた伊藤義博監督のお墓参りに行ってきました。本来はホームで決められたら良かったのでしょうが、いろいろな意味でタイミングが合っていたのかもしれないですね。
――東北福祉大での経験が今に生きているのでしょうか。
和田 もちろん大学でもそうですし、高校や社会人でも強いチームで育ててもらってきたので、すべてが自分の力になっています。
――県岐阜商高、東北福祉大、神戸製鋼。すべて名のあるチームでプレーし、24歳で捕手として
西武に入団。当初は即戦力の期待も大きかったと思います。
和田 自分では自信を持ってプロの世界に入ったんですけどね・・・
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