日本ハムのベンチからは絶えず、声が響く。出場機会を得れば、水を得た魚のようにハッスルプレーを連発する。
杉谷拳士がムードメーカー&バイプレーヤーの「二刀流」で、若手主体のチームの屋台骨を支えている。親しみやすく、ユーモアあふれる人柄で、栗山監督をはじめ首脳陣、先輩、後輩も問わずに絡む。天性の「いじられキャラ」を発揮するマスコット的な存在だ。
7年目の今季は「本業」の選手としても覚醒の兆しを見せてきた。7月2日現在で打率は.330。チームで唯一の貴重なスイッチヒッターで外野はすべて、内野は二塁と三塁を守れるユーティリティーとして急場を補ってきた。「今年は勝負をかけている。何とか、レギュラーの一角を奪いたい」。明確な目標を持って挑んでおり、一時はその野望をかなえそうだった。
5月上旬に、不動の二塁手の田中賢が負傷し、中堅手の
陽岱鋼が故障離脱した直後に救世主となった。内外野の主力が不在で、野手の構成が固まらない中で抜てきされてブレーク。主に二塁または中堅で起用され、5月17日の
オリックス戦(札幌ドーム)から出場10試合連続安打。うち5試合で2度の猛打賞を含む複数安打と、完璧に「代役」の座を担った。
巨人からトレードで矢野が加入以降、出場機会が減少。辛抱強くベンチを盛り上げながら、再躍動のチャンスをうかがっている。当然目指すは、定位置を奪い取ること。試合前には報道陣ら公衆の面前で、栗山監督に「僕、今日いけます! キーマンになります!」などと直訴するのがルーティン。消耗が激しい夏場へ向け、目をぎらつかせてチャンスを待つ。杉谷が存在価値を見せる。