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鈴木(巨人)が19年目のオールスター初出場なら、86年のこの人も19年目の初出場
そして、期待どおり(?)の珍走塁

 

文=平野重治



 今年のオールスターゲームは、19年目の巨人鈴木尚広外野手の初出場が話題になったが「19年目の初」で、懐かしい名前が思い出された。その名は川藤幸三。86年、阪神ひと筋19年の“浪花の春団治”は、阪神・吉田義男監督の粋なはからいで球宴初出場。19年目の初出場は、オールスター記録(鈴木はこれに並ぶ)。

 当時は、鈴木以上に話題になったものだ。阪神は前年の日本一チーム。川藤は84年シーズンの契約更改で、「給料なんかナンボでもエエから残してくれ」と球団に直訴。年俸は半分以下になったが、「ワシから野球を取ったらな〜んにも残らん」と84年はソコソコも85年、ヒットわずかに5本。打率.179で阪神のVには貢献できなかった。86年は、オールスター効果があったか(?)、5本塁打(生涯最多)、打率.265をマークして心置きなくこの年限りで引退した。

 話を86年のオールスターに戻すと、正代夫人によると「出場が決まった日は飲み過ぎて朝帰り。その日は学校(正代さんは宝塚市内の小学校の教諭)に電話してきて『オイ、驚くな。オールスターちゅうものに出るんや』。まったくねえ」。まさに春団治の面目躍如。

 で、オールスターではどうなったかというと、こんなことに。第2戦(大阪)の9回表二死から代打で登場した川藤は左中間に安打。フツーなら楽々二塁打の当たりだが、春団治、遅い、遅い。二塁のかなり手前でアウトになってしまった。スタンドは大爆笑。タッチしたセカンドの近鉄・大石大二郎は「記念にボールあげましょか」とでも言いたげなポーズ。松橋慶秀二塁塁審など思い切り笑っている。さてこのシーンを正代夫人はどう見たか。「主人の野球なんか、恥ずかしくて球場でなんかよう見ません。テレビで見ましたが、あんなんで二塁へ行けるワケがないのにねえ」。春団治も夫人の前では形無しやねえ。
おんりい・いえすたでい

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