「変化」をキーワードに、一新した立場で新シーズンに臨む男たちの声を聞く新連載第2回は、昨シーズンに巨人の最激戦区である外野争いを勝ち抜き、一番・センターに座った立岡宗一郎の登場だ。高橋由伸新監督体制となり、競争はゼロからとシビアだが、自らの居場所を再びつかむため、ガツガツと挑戦を続けている。 取材・構成=坂本匠、写真=高塩隆、湯浅芳昭、BBM 明日の自分のため
追う者から追われる者へ。2015年は自身最多の91試合に出場、その多くで「一番・センター」を担った立岡宗一郎のポジションを、チーム内にいる多くのライバルたちが狙っている。どの球団にも当然に存在する定位置争いだが、特に巨人の“外野手”はソフトバンクと並び12球団で最も過酷なレースが予想されるポジションの1つ。昨年の開幕は二軍スタートと、1年前の春季キャンプ時点では、一軍生き残りを懸けてアピールを続ける「期待の若手の1人」に過ぎなかったが、自らの手で周囲の見る目、何より首脳陣の評価を一変させて迎えたこのプレシーズン、そして16年を、どのような心構えで過ごしているのだろうか。 91試合ですか。たったそれだけ、全然物足りないな、というのが昨年に対する正直な思いです。そう感じる一番の理由は、1年間フルで出場してこそレギュラーだと思いますし、長年、フルに近い試合数に出ている人たちと自分を比べてはダメ。確かにバッティング面では、3割(.304)、3ケタ安打(103安打)が残りましたけど、規定打席にも達していないですから(367打席※規定打席は443)。
そもそも、ポジションを圧倒的な力で奪ったわけではないんです。故障者が出て、他の選手たちも本調子ではない中で、タイミングよく自分が使ってもらった、そこでポンポンとヒットが出た、という部分が大きい。今年は、やっぱりみんな目の色を変えてやっていると思いますし、むしろその中で勝ち抜いて試合に出たいという気持ちのほうが強いですね。
球団には昨年の結果を評価していただいて、巨人に移籍して初めて春季キャンプも一軍に呼んでもらっているので、昨年のように、いや、昨年以上にやらなければいけないな、できるかな、という怖さもあります。でも、前の年が良くて、次の年がダメで、一軍と二軍を行ったり来たりするような選手にはなりたくない。ソフトバンクから12年途中にトレードで来て、そういう面でも悔しさを味わいましたし、それを見返したい思いは今でも強く残っていますね。「毎試合、毎試合を明日の自分の出番をつかむために、全力でやる」というのが昨シーズン中のテーマの1つでした。代わりはいくらでもいるチーム。調子が悪くても、多少成績が上がって来なくても、それでも使ってもらえる選手はごくわずか。僕などは、まだまだ毎日結果を出し、良い印象を与え続けていかなければいけない立場ですから、昨年よりも気持ち的に、ガツガツしているかもしれないです。

打力のレベルアップはもちろんだが、センターを狙う以上、守備力向上も絶対条件。春季キャンプでは1本1本の集中力を高め、質の向上に取り組んだ
トリプルスリーとの共通点
昨年、原辰徳前監督がことあるごとに口に出し、チームに求めたキーワードが“野性味”である。能力に疑いの余地はない。経験も豊富。そんな選手たちの集団が、優勝を重ねていく中で、いつしかおとなしく、優等生的なプレーから脱し得なくなっていた。はたから見ると、多くの制約も相まって苦しんでいるように見えるチームに、新風を吹き込んだのが立岡だった。本能むき出しのパフォーマンスはまさに“野性”のそれ。彼を一軍へと送り込んだ岡崎郁前二軍監督のアドバイスが秀逸だ。「動物的にやりなさい」。良い意味でジャイアンツらしくないスタイルを確立しつつある立岡の、原点となる言葉である。 「動物的に~」というのは、昨年、ファームの開幕を迎えたときに、岡崎さんに吉川(大幾)と呼ばれて、言われた言葉です。あらためて説明すると・・・
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