50メートル走5秒9に遠投110メートル。ポテンシャルの高さは、静岡高時代から評判だった。昨秋は打撃不振に陥るも、昨年末に母校・静高グラウンドで汗を流すと一つのきっかけをつかむ。後輩の鈴木将平(2年)と練習する中で自身のスタイルを取り戻したのだ。
取材・文=岡本朋祐、写真=BBM

スピードと判断力、中堅守備は抜群の安定感

　キリッとした甘いマスク。エンジのグラウンドコートを着用した姿は、どことなく誰かに似ている。北海道日本ハム・斎藤佑樹が自主トレで母校の早大・東伏見球場(昨年11月21日に安部球場と改称)で汗を流していると、現役選手が「おい、中澤！」と見間違えたことは一度や二度ではないという。

「1年生のとき、斎藤さんと直接接していた当時の4年生からも『雰囲気がそっくり』と言われたことはあります」

　昨年のマネジャーチームアンケートにおける「チーム一のイケメン選手」の項目においても、満場一致で選出されたのが中澤彰太だった。

　外見で野球の優劣を競うわけではないが、第一印象は重要だ。かつて在阪球団のあるベテランスカウトは独自の評価項目として「プレー以外に顔、スター性というのは非常に大事です」と“真顔”で語っていたことがある。プロ野球は人気商売だから、ファンからの支持を集める“資質”も、会社の採用担当(スカウト)としては譲れないポイントなのだ。

　プロが注目する“大前提”となるプレー面においても、中澤には大きな武器がある。遠投110メートルで、50メートル走を5秒9で駆ける俊足外野手だ。

「守備範囲、肩、足には譲れないものがある。相手打者のスイングの仕方、ボールの見方で(打球方向の)予想はある程度つきます。打球が高く上がったら、追いつく自信はある」

　脚力を生かした打撃でも、左打席からシュアなスイングを見せる。内角のさばきがうまく、中澤が引っ張った打球は不思議と切れることなく、右翼線に落ちる。体を開かずにグッと我慢し、一気にヘッドを利かせるからうまい具合に、スライスがかかるのだ。3年秋の時点で東京六大学リーグ通算48安打。立大・佐藤拓也(3年・浦和学院高)の74安打に次ぐ、現役2位。通算2本塁打と、スタンドインも可能なパンチ力の持ち主である。

「プロ一本です。野球を始めたときから、プロでやるのが目標でした。大学進学し、4年後は絶対に行くことを決めていた。そこを曲げることはできません」