2015年の広島が期待感に包まれているのは、黒田博樹の存在があるからだろう。7年間のメジャー経験を引っ提げて、プロ入りから11年間を過ごした広島に復帰。初登板の3月29日のヤクルト戦でも7回5安打無失点で勝利投手となり、その経歴がダテではないことを証明した。大きな期待を背負い、結果を出し続ける真のプロフェッショナル。20億円とも言われたオファーを袖にして、古巣復帰を選んだ男の美学に触れる。 取材・構成=菊池仁志 写真=小山真司、佐藤真一、前島進 「動くボール」に得た発想の転換
──黒田選手の登板で、「動くボール」がクローズアップされています。黒田選手にとって、投球の軸になる球種は何になるのでしょうか。
黒田 それは当然、試合によって変わってくるものなんですけども、すべてを含めて言うならば、ツーシーム系のボールが軸になっていると思います。
──ツーシームのほかにフォーシームはもちろん、スライダー、カーブなどの球種を操りますが、ツーシームはその中でどのような位置付けのボールなのでしょうか。
黒田 まあ、僕自身はツーシームもフォーシームもストレート系のボールというとらえ方です。ムービングファストボールと言うくらいなんで、そういう考え方でいます。ツーシームが変化球だという意識はあんまりないですね。ファストボールだと思って投げています。
──打者の手元で動くツーシームですが、その動きまでコントロールできるものですか。
黒田 それをコントロールしようと思うと、いろいろと難しいことが出てきて、フォームを崩すことにもなります。僕はツーシームもフォーシームと同じように強く投げることを第一に考えていますね。そうすれば、たとえ変化しなくても、ある程度強いボールであれば大丈夫だっていう投げ方です。
──ボールの動きを求めるのではなく、あくまで強いボールを投げるフォームで投げた結果、ボールが動けばいいという考え方。
黒田 曲がらないとダメっていうわけではないですからね。逆に、曲がったり曲がらなかったりすると、バッターもやっかいでしょうし。それくらいの気持ちで投げています。まあ、その日の調子でだいたいの動き方は把握できますので。
──たとえば、アウトローを狙ったツーシームが、動いたことによって狙いから外れることも生じると思います。
黒田 それは自分の中では別にOKです。当然、フォーシームでも自分が狙ったところに100パーセント行くわけじゃありませんからね。その発想の転換というか、考え方、割り切り方だと思います。
──それはメジャーでプレーしたから得られた発想でしょうか。
黒田 完璧な投球は簡単なことではないことを認めるというか、受け入れるというか。それはアメリカに行って特に強くなった部分だと思います。ロイ・ハラデーとか、ティム・ハドソン、(グレッグ・)マダックスといったメジャーでサイ・ヤング賞を獲るレベルのピッチャーでも、そういうボールで素晴らしい成績を残しているんです。日本ではきれいなフォーシームで空振りを取るのが良いピッチャーっていうイメージがありがちですけど、向こうはそういう考えはまったくありません。抑えられるピッチャーこそすごいピッチャーだという考え方です。僕もアメリカに行って、そういうふうに考え方が180度変わったと思いますね。
──マダックスには打者を見ながら投げることを教わったそうですね。
黒田 実際に映像を見ながら、そういう話をして、いろんなことを聞いたことがありました。前に日本で投げていたときはそこまでの観察力ってなかったと思います。それも日本とアメリカの違いで、アメリカは・・・
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