9月に入り負けない! マジックが一気に減っていった。激戦が予想された2023年、シーズンが進むにつれ選手たちが大きく成長。投打がかみ合い、岡田采配と見事に融合して負けないチームへと変貌。球団最速となる9月14日に「アレ」を18年ぶりに達成した。 写真=佐藤真一、早浪章弘、毛受亮介、宮原和也 
18年ぶり「アレ」の瞬間! マウンドへ猛虎ナインが一気に駆け寄り抱き合った
不動の四番が泣いていた。人目をはばからず……。「最下位も経験して、つらいときのことなどを思い出して」。18年ぶりの歓喜の輪は、“涙と笑顔”が混在していた。
「9月にまさかこんなに強くなるとは。みんなが力を付けて、チームができたということ」と
岡田彰布監督。9月に入り11連勝。投手は点を与えず、打線は集中攻撃で一気に点を奪い、優勢に試合を進めていく。投打の見事な融合を見せ、試合前から、負けない雰囲気を醸しだしていたのも事実だ。
この9月の強さを例えるなら、新築家屋のお披露目の場。理想の設計にて建てられた家(チーム)が出来上がり、ファンへ素晴らしき勝ち方を披露した。だが、そう簡単には出来上がった家ではなかった。
頑丈な家をつくるには土台が必要だ。
阪神はその基礎作りを始めた2016年、
金本知憲を監督に招へい。多くの若手を起用し、強固な基礎固めを行った。しかし18年に最下位となり辞任。そのあとを受けた
矢野燿大は、超積極的野球を編み出し、金本監督が作った土台の上に、柱など家の中心部分を配置していった。さらに若い選手たちに考えることを推奨し、失敗にも怒らない姿勢を貫いた。
「根拠を自分の中で見出したなら失敗しても何も言われません」。代走起用が多かった
島田海吏はそう語った。その野球を考える形が出来上がるときに、装飾に抜群の力を発揮する名将・岡田彰布監督が昨秋に就任する。
「もともと能力の高い選手は多いと思っていた」と選手たちに、勝つために何が必要なのかを示した。それが
大山悠輔の四番と一塁手固定。
佐藤輝明の三塁固定に
中野拓夢の二塁コンバート。そして、つなぎを生かすための八番・
木浪聖也や
小幡竜平の起用であり、四球の査定アップだった。

ウイニングボールをつかんだ中野[51]、外野手の近本[5]、島田[53]も輪の中に遅れじと一気に飛び込んでいった
目標は、守り勝つ野球で、投手陣を整備。若手にも先発でチャンスを与え、中継ぎ陣も疲労を考慮しながら、一、二軍関係なく調子のいい投手を起用し、1年間同じ力を維持し続けた。
5月に7連勝に9連勝と勝つことへの自信がチームにつくと、6月には苦労したが、7、8月とさらに家の形づくりは加速され、9月を迎える。金本-矢野-岡田とつないで作られた家が9月に入り一気に11連勝という形で完成した。
「(投手陣は)みんなカバーして、みんなが力ある。ブルペン陣も誰を出しても勝ってる。(打線は)適材適所、役割、その打順でみんなが仕事をした」と岡田監督は、選手たちを高く評価。その結実が、四番の涙だった。「まだまだ力を付けて、うまくなっていきますよ」と指揮官は、猛虎の黄金時代を予言。そこにはこれだけの根拠がある。この優勝は、猛虎黄金期の始まりに過ぎないはずだ。

今季最多の4万2648人の観客が詰めかけた甲子園。大歓声が上がる中、場内を1周する猛虎ナイン
2023.9.14 @阪神甲子園球場 阪神 4-3 巨人 ■開始18時00分(試合時間2時間49分)/観衆4万2648

<バッテリー>
[巨]P●赤星、今村、菊地-C岸田、大城
[神]P○才木、岩貞、石井、島本、岩崎-C坂本
【評】阪神・才木と巨人・赤星の投手戦となり0対0で迎えた6回裏に四番・大山が一死一、三塁からセンターへ犠飛を放ち先制。続く五番・佐藤輝が2ランを放ちこの回3点を奪う。続く7回にも1点を奪った阪神は、才木が7回1失点。その後リリーフ陣が踏ん張り4対3で11連勝を飾り、18年ぶり6度目の優勝を果たした。