
神宮球場
1980年、初夏――。
ちょうどクラブハウスから出てきた
大杉勝男さんとすれ違ったのは、僕がまだ10歳のころのことだ。突然目の前に現れた大男に驚いたものの、群がる子どもたちに笑顔を見せながら、大杉さんは堂々と闊歩していた。
(カッコいいなぁ……)
そんな思いで球場に向かっていく背番号8の大きな背中を見つめていた。その日の試合でも、大杉さんは「四番・ファースト」で起用されていたけれど、この日、彼が打ったのかどうかは残念ながら記憶にない。それでも、初めて目の前で見た大きな背中は、少年の日の甘美な記憶として今も生き生きと息づいている。
彼の引退後は、セカンドベース上で
高木豊と大乱闘を演じた
ダン・ブリッグスや、阪急ブレーブスから移籍したものの、すでに全盛期は過ぎていた
ボビー・マルカーノが四番を務めた。87年入団の
ボブ・ホーナーのインパクトは強烈だったけど、彼はわずか1シーズンで日本球界を去ってしまい、いずれも大杉さんのような圧倒的存在感はなかった。
やがて時代は昭和から平成に変わった。そして92年の春、大杉さんは47歳という若さでこの世を去った。僕にとっての「最初の四番打者」が天に召されたことを知って大きなショックを受けると同時に、あのとき目の当たりにした大きな背中、勇ましい後ろ姿が頭をよぎった。
現在、78年のスワローズV1戦士たちに話を聞く取材を続けている・・・
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