2年目のジンクスなんてどこ吹く風とばかりに快投を続ける野茂英雄。このパ・リーグの新エースと前年までロッテでユニフォームを着ていた“マサカリ投法”村田兆治氏の対談が実現したのは週刊ベースボール1991年7月15日号だった。どちらもストレート、フォークを主武器とした剛腕の貴重な語らいを一部抜粋してお届けする。 
野茂英雄、村田兆治[右]
前年の活躍に慢心せず人の意見に聞く耳を持つ
村田 私がキャンプに行って、2年目のジンクスをどう思うかと聞いたときに力強く、答えてくれたよね。
野茂 はい。2年目のジンクスは終わったときにあらためて聞いてほしい、と。ジンクスなんて言われる雑音は気にせずに、とにかく自分がやらないとしようがないですからね。基本ということだけを大事に心掛けて。
村田 そういう意味で、1年目からこだわってきた自分なりの調整法というのがあるよね。
野茂 まず遠投ですね。
村田 最近は遠投を重視する選手が少なくなってきたけれど、速い球が投げられなくなっていく第一の原因に、遠投能力の低下があるんだ。速球投手というのはいずれ投球の転換期がやってくるけれど、ライアン(レンジャーズ)のようにセルフケアを忘れなければ、その選手寿命を延ばせるものだしね。
野茂 はい。それまで自分なりにできることを精いっぱいやっていこうと。それで、食生活はずいぶんと変えてきました。試合前は高炭水化物のものを食べないとか、肉を減らすとかいうふうに。それと、昨オフに思ったんですが、自分は缶コーヒーとかジュースで太ってるな、と。それを控えれば、体重を増やすことなく過ごせるんじゃないかって。
村田 私が心配していたのは、あえていうなら体重の問題だけだった。若いうちからここまで気を使って、一つひとつ変えていく、その姿勢をずっと貫いていける自信があるからこそ、2年目のジンクスなんていう声にも惑わされることはないわけだ。
野茂 僕の場合は、立花(立花龍司)さんといういいトレーニングコーチに恵まれましたから。村田さんに影響を受けて、トレーニング法の勉強を始めたそうなんですが、もしあの人がいなかったら……。
村田 それでも、人の言うことが聞けるというのは、なかなか大変なことなんだ。こうして勝ち続けていられるのは、いいアドバイスはきちんと取り入れていける野茂自身の姿勢にあるんだ。去年の活躍に慢心せずに、人の意見に対して聞く耳を持っているということも、野茂が2年目のジンクスをものともしない一つの要因なんだろうな。
ここ、というときには三振を取りたい
村田 野茂は、何も力だけ、調子だけで勝っているわけじゃないんだよな。毎日の決して面白いわけではない練習や調整のなかで・・・
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