世界中に野球をプレーできる舞台はある。この冬、25歳の右腕がプレーする舞台に選んだのは中南米のコロンビアだった。異国の地で懸命に腕を振ると望外のMVP獲得。さらに、新たなマウンドに上がる機会につながった。大学、社会人、そして独立リーグを経て海外に活路を見いだした男は何者か――。 取材・文=中島大輔 
優勝トロフィーを手に笑顔を見せるMVPに輝いた根岸[写真=avisphotographypr]
ドラフト指名かなわず次の道を模索して
大谷翔平と
山本由伸がドジャースと大型契約を結び、
今永昇太と
松井裕樹のMLB挑戦が決まった今オフ。地球の裏側では“無名”の日本人投手が快挙を成し遂げた。南米のコロンビアで開催されたウイン
ターリーグで25歳の右腕投手・根岸涼が最優秀選手に輝いたのだ。
「びっくりしました。オープナーで先発したのが1試合あったけど、それ以外は全部リリーフだったので。中継ぎ投手がMVPを獲ることはあまりないと思うので驚きました」
この冬、根岸はコロンビアの名門カイマネス・デ・バランキージャでプレーした。同国は2023年ワールド・ベースボール・クラシック初戦でメキシコを撃破、MLBではホセ・キンタナ(メッツ)、ナビル・クリスマット(ドジャース傘下)、ジオ・ウルシェラ(エンゼルスFA)らが活躍するなど、特に北部のカリブ海沿いで野球が盛んだ。11月から1月に開催されるウインターリーグは実力的に2Aと同程度で、月給は2000米ドルくらいとされる。
23年、社会人野球のJFE西日本から茨城アストロプラネッツに移籍した根岸はBCリーグ南地区の最優秀防御率に輝いたが、目標としていたNPB球団からのドラフト指名がかなわず、次の道を模索した。
「僕は根岸のレベルをよく分かっています。入口をコロンビアにして結果を出せば、ほかの中南米への移籍につながるだろうと考えました」
そう話したのは茨城の色川冬馬GMだ。北米を拠点とするトラベリングチーム「アジアンブリーズ」も運営する同氏はバランキージャの監督を務めるホセ・モスケーラと知り合いで、同球団のGMにつないでもらって根岸を売り込んだ。
色川GMの目論見以上に、根岸はバランキージャに合流した直後から好投を続けた。平均150キロ前後のストレートと鋭く落ちるスプリット、スライダーを武器に主に試合終盤の8回を任され、計21試合、26回1/3を投げて防御率1.71をマーク。チームメートで元
巨人の
ダニエル・ミサキとともに優勝の立役者になった。根岸は異国で活躍し、大きな手応えをつかんだ。
「海外ではスプリットを投げる投手が少ないので、打者に対して非常に有効だと感じました。でも周囲には150キロ台後半を投げる投手も多く、真っすぐの速さは負けていると思わされましたね。フィジカルも含め、もっと上げていかないと今以上の活躍はできないと感じました」
コロンビアのウインターリーグに参戦しているのは、アメリカのマイナー・リーガーや、メキシカン・リーグを主戦場とする選手らだ。コロンビア人だけでなく、アメリカやドミニカ共和国など多くの国からやって来ている。ラティーノたちは・・・
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