ロッテファンだけでなく、多くの野球ファンが新天地での
涌井秀章に注目していることだろう。
西武からFA宣言を行い移籍した右腕は、今季のチームの浮沈を占う存在。涌井の活躍次第ではリーグ優勝と日本一は十分に狙えるというのがチーム関係者の大方の意見だ。
再起のために、意を決して環境を変えた。昨季は45試合に登板して5勝7敗7セーブ。沢村賞投手(09年)ということを考えればもの足りない。特にこだわりを持っていた先発としては満足な結果が出せず、チーム方針で救援へ。シーズン終盤に守護神として大活躍したものの、先発へのこだわりを捨てることはできなかった。
ロッテは昨季、3年ぶりにAクラス入りしたものの、先発投手に泣かされた。故障や離脱が相次ぎ、チーム防御率はリーグワーストの3.77。完投勝利数もわずか3だった。完投能力のある先発投手の補強という構想と涌井が一致。さらに、昨季から指揮を執る伊東監督は涌井にとって西武入団時の恩師で、コーチ陣には大迫トレーニングコーチら旧知の存在が多いことも涌井の背中を押した。
ただ、何と言っても一番の決め手は先発での起用を約束した“先発手形”だ。「先発としてしか考えていないと言ってもらった。本当に必要としてくれているんだなと感じた」。悩み抜いた結果、再び輝きを取り戻すための選択をした。「自分は千葉県出身。地元のために、ロッテのために頑張りたい。ここ2、3年はパッとしなかったけど、気持ちを入れ直すために新天地で頑張りたい」。背番号はプロ入り時と同じ「16」に決まった。まさに心機一転。完全復活のための環境は整っている。