週刊ベースボールONLINE

山崎夏生のルール教室

ボールにグラブを投げつけて止める 状況次第で与えられる塁に違いが/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

  1

グラブを投げつけたことで単打を結果的に三塁打にしてしまい、茫然自失のオーティズ[右]を慰めるベニー・アグバヤニ[左]


【問】先月、MLBでこんな珍プレーがありました。一死一塁の場面で投ゴロ、これを捕球した投手が難しい体勢から一塁へ送球したのですが、二塁ベース側へそれて外野へ抜けそうになりました。その送球に対し、なんと一塁手はファーストミットを投げつけて阻止したのです。審判団は各走者に2個の進塁を与えました。以前、ロッテの外国人選手がライト前に抜けそうな打球に対しグラブを投げつけたときには3個の進塁だったような気がするのですが……。

【答】よく覚えていますね。確かに2008年にロッテのホセ・オーティズ二塁手が、一塁手のはじいた打球がライト前に転々としそうになった際、グラブを投げつけて止めてしまいました。このときは打者走者に三塁が与えらました。ここで重要なのは、グラブを投げつけるプレーの対象が打球、送球、投球のいずれかで進塁の個数が違うということです。

 まず打球の場合ですと「5.06.b.進塁」の規定により3個の進塁が与えられます。これはグラブのみならず帽子やマスクなどでも適用されます。明らかに本塁打となるであろう打球でしたら本塁打と認定されます。

 送球の場合は2個の進塁で、いずれもボールインプレーですから、走者は危険を冒して与えられる塁以上に進むこともできます。ただし両ケースともボールに触れなければこの規則は適用されません。また進塁の起点はボールにグラブや帽子が当たった時点での走者の位置です。

 で、投球の場合は1個の進塁ですが、実はこの項目は07年に明記されました。野茂英雄投手(近鉄・ドジャースほか)の女房役として名をはせたマイク・ピアザ捕手が投球をはじいて、それをマスクで拾い上げてしまったことがありました。このプレーを契機として同規則に新たに(3)(E)が書き加えられたのです。それまでは投球と送球は同様の扱いでした。

 では、ライン際を転がる打球に対し息を吹きかけてファウルにしようとする行為はどうか? 何度か珍プレーで見かけたこともあるでしょう。この場合、もしもその影響でファウルテリトリーに打球が押し出されたと審判が見なしたらフェアとなります。

 ただ私も実際にやってみましたが、重さ約145グラムの硬球が摩擦係数の大きい芝生や土の上を転がっていれば、まず動くことはありませんでした。発想としては面白いかもしれませんが、実効性もなくリスクのみがある無駄なプレーだと言わざるをえないでしょう。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。

この記事はいかがでしたか?

よく分かる!ルール教室

よく分かる!ルール教室

元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

関連情報

みんなのコメント 0

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング