
後半戦に入り、早いカウントから打ちに行くとことで、好成績を挙げ始めたオルソン。大谷の本塁打数を一気に抜きMLBトップに躍り出た
現地時間8月16日終了時点、ナ・リーグ東地区、ブレーブスの主砲マット・オルソンがエンゼルスの
大谷翔平より一本多い43本塁打でMLB全体のトップに立っている。OPS(出塁率+長打率)は大谷の1.071に次ぐ2位の1.000。リーグは異なるが、あと1か月半、同年齢の2人がどこまで数字を伸ばすか楽しみだ。
オルソンはブレーキングボールを打つのが得意。右投手のストライクゾーンのスライダーはたいていスイングし、特に内角低めを長打にする。ボールになる球にも手を出してしまい、ゆえに三振が多かった。それが今季の途中から三振が減り、打率も.274と確実性が増した。
オルソンはその理由について「早いカウントから打っていることが大きい」と説明する。「これまでは早いカウントで打てる球を空振りしたり、ファールにするなど打ち損じが多かった。目いっぱい振って、バランスを崩すこともあった。そこを反省し、確実に前に飛ばせている」と言う。
今季最初の68試合は打率.228、出塁率.347、長打率.483で、三振率は30%近く。それが直近の52試合は.344、.430、.810で、三振率は20%以下で、見違えるほど良くなった。
タイトル争いは初めてだ。過去のシーズン最多本塁打は2021年の39本で30本台は3度あるが、今季は50本台ペース。ひょっとしたら60本に届くかもしれない。プレッシャーはと聞かれると、「それはないよ。打席に入るときに本塁打は狙わない。狙って打った回数は、これまでで片手で数えられるくらいしかない。それより内容のある打席にしたい」。
チャンスに強くここまでメジャー1位の107打点である。オルソンはジョージア州アトランタ出身。12年のドラフトでアスレチックスから全体47番目で指名。10年後の22年に地元チームにトレードされた。「ブレーブスファンとして育ったから、このユニフォームを着られるのはうれしい」と微笑む。とはいえ一塁はあの
フレディ・フリーマンのポジションだったから、後継者としてプレッシャーは大きかった。フリーマンは20年のナ・リーグMVPで、21年の世界一でもチームリーダーだった。通算8度MVP投票の対象になるなど、毎年安定して高い数字を残した。
「そこが大変なのは分かっていた。でも自分の野球をやるだけ。フレディは街にとっても球団にとっても大きな存在で殿堂入りする選手。われわれは違う野球選手で強みや弱みも異なる」と説明する。
22年は打率.240、34本塁打、103打点とまずまず。そしてブレーブス2年目の今季、一気に数字を上げた。「アスレチックスに10年いたから、故郷のチームと言っても、去年は環境の変化に戸惑った。今はブレーブスのコーチのことも、チームメートのことも、球場についてもきちんと分かっている。やりやすい」と明かす。
本塁打数を積み重ねていく上で、オルソンが大谷より有利な点がある。ブレーブスには打率.335、27本塁打、55盗塁の
ロナルド・アクーニャ・ジュニアを筆頭に強打者が並ぶ打線であり、きちんと勝負してもらえるからだ。ここまで敬遠は7度。一方の大谷はその倍以上の16度である。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images