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白熱する田中フィーバーの余波

 

迫るドラフト当日その舞台裏


 すでに数多くの球団が田中の獲得に興味を示し、京大出身者として初のドラフト指名は有力視されている。マスコミの注目度も増す一方で、副務を務める辻野賢太(3年・大阪星光学院)は、「取材依頼の数がすごく、お断りさせてもらっている場合もあります。60連敗をストップしたとき(12年5月21日、対関学大)も多かったですが、ここまで多くの方が来るのは見たことがありません」と語る。

会見は京大構内で行われる。異例のマスコミ数となりそうだ



 現在でもこの盛り上がりなのだから、10月23日のドラフト当日はどうなってしまうのか。当日の記者会見場の手配やマスコミ対応の準備を進めている寶監督はこう話す。

「今のところは、控室と記者会見場を用意し、田中は控室で待機。もし指名されれば、記者会見場へ行く予定です。これまでに前例がないだけに準備も大変です。初めに学校が手配していた会見場は小さな教室くらいの大きさだったのですが、一般紙や通信社、スポーツ紙、雑誌、テレビ局などが訪れることを考えると小さいように感じたので、学校には違う部屋をお願いしています」

 予想されるマスコミの数は少なくとも50人超。これまでノーベル賞受賞者などの会見を行ってきた経験はあるものの、「スポーツ紙なども来ますから、マスコミはもっと多くなるでしょうね。ひょっとしたら京大史上最多となるかもしれません」(寶監督)。

 すでに「指名された場合、胴上げなどを行う予定は?」というマスコミからの問い合わせもあるそうで、「やりそうな気がします」と辻野副務。指名の行方だけでなく、初の取材対応も見もの!?

東大出身のプロは過去5人


 これまで、京大からプロへと進んだ選手はいない。1987年に大学通算10本塁打の関西学生野球リーグ記録(当時)を打ち立て、ヤクルトで活躍したボブ・ホーナーにちなんで「京大のホーナー」とも言われた沢田誠が阪神、近鉄などから指名を噂されたものの、結局指名はなく、大阪ガスへと進んだ(後に京大監督も務める)。

 京大と並び立つ最高学府である東大は過去5人のプロ選手を輩出している。第一号となった新治伸治(大洋)は1年目(65年)に5勝2敗、翌年に4勝4敗を挙げたが、67年、68年と未勝利に終わると、その年限りでユニフォームを脱いだ。

東大初のプロ野球選手・新治。プロでは通算9勝を挙げた



 新治に続いた4人の成績は下記のとおりだが、いずれもプロ野球選手として大成したとは言い難い実績だ。

過去の東大出身プロ野球選手
※○数字はドラフト指名順位

新治伸治
投手 大洋65〜68年 88試合9勝6敗0セーブ、防御率3.29

井手峻
投手、外野手 中日67年3位〜76年 17試合1勝4敗0セーブ、防御率5.13
359試合1本塁打2打点、打率.188

小林至
投手 ロッテ92年8位〜93年 一軍出場なし

遠藤良平
投手 日本ハム00年7位〜01年 1試合0勝0敗0セーブ、防御率―

松家卓弘
投手 横浜、日本ハム05年9位〜12年 14試合0勝1敗0セーブ、防御率4.50

 それでも、関西学生野球リーグ出身者を間近で見てきた寶監督は、田中の実力を高く評価する。

「大隣君(憲司、近大→ソフトバンク)や宮西君(尚生、関学大→日本ハム)もプロで活躍し、左と右で違いますが、宮西君は田中とあまり変わらない……むしろ田中の方が良いと感じます」

 また、田中は同リーグで通算8勝の成績を残したが、通算6勝ながらプロで奮闘する岩田稔(関大→阪神)らの例もあり、「プロでしっかり鍛えられればさらに伸びるはず」と太鼓判を押す。

 プロ指名はゴールではなく、活躍するためのスタートであることは田中自身がよく理解しているはず。前例を覆すプレーを期待したい。
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