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念願のプロ入りを果たし、満面の笑みを浮かべる島袋。プロで春夏連覇左腕の真価を発揮する


甲子園春夏連覇から4年――。進学した中大では思うような結果を残せずに苦しんだ島袋洋奨。しかし、プロへの道をあきらめることなく、プロ志望届を提出し、そして夢の世界を勝ち取った。野球人生で光と影を経験した左腕。新たな舞台で栄光をつかめるか――。
文=佐伯 要 写真=井出秀人

リーグ戦の最後で取り戻した感覚


福岡ソフトバンクホークス、島袋洋奨」

 名前が読み上げられると、中大八王子キャンパスのホールに詰めかけた野球部員や一般学生ら約250名から、歓声が沸き起こった。

 ソフトバンクからの5位指名を受けた中大のエース左腕・島袋洋奨はホールの舞台上に姿を見せると、左目からこぼれ落ちそうになった涙を右手の親指でそっとぬぐった。

「安心したというか、ホッとしました。(順位については)どういう評価をいただいてもプロで挑戦したいと志望届を提出したので、指名していただいたことに感謝しています」そして、43試合に登板して12勝20敗、防御率2.73という大学4年間を振り返り、プロでの抱負を語った。

「なかなか勝てる投球ができなかったのですが、東都リーグで学べたことはたくさんあった。プロでやっていく自信はあります。持ち味は直球。勝負どころで力強い球を投げたい」

 2010年の甲子園で興南高を史上6校目の春夏連覇に導いたトルネード左腕は、プロ志望届を出さずに中大へ進学した。中大では、1年春のリーグ戦で中大の1年生としては48年ぶりとなる開幕投手を務めるなど、順調なスタートを切る。

 だが、2年春のリーグ戦中に左ヒジを痛めたこともあり、3年秋までの成績は36試合で11勝17敗、防御率2.33。ドラフトイヤーの開幕を前に「自分がチームを引っ張っていこう」と主将にも就任した島袋は、こう話していた。「この成績でプロへ行けるとは思っていない。結果を残さなければ」

 だが、今春は6試合に登板して0勝2敗、防御率6.75。最速150キロの直球とスライダー、ツーシームで打者をねじ伏せる彼本来の投球は影をひそめ、打者の背後を通ったり、捕手が捕れないほどスッポ抜ける投球だったりが何度も見られるほどの制球難に陥った。春のリーグ戦を終えた島袋の表情は、こわばっていた。

「情けないんですけど、自分の中でもいろいろあって、どうしていいか、分からないということもあった」

 春のシーズン途中から、全身を使って投げることを意識するため、ブルペンではカーブを多投。その成果で、8月19日の巨人とのプロアマ交流試合では6回1失点と、まずまずの投球を見せていた。

 迎えた4年秋。亜大との開幕カードでは登板を回避し、2カード目の国学院大1回戦(9月9日)の8回からリリーフで登板した。だが・・・

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