週刊ベースボールONLINE


優勝監督ストーリー 〜秋山幸二監督〜

 

退任を発表したのは、CSファイナルステージ開幕前日の10月14日。3位から勝ち上がってきた日本ハムとの対戦は6戦目までもつれ込んだが、日本シリーズでは第2戦から4連勝で阪神を倒し、本拠地・福岡で有終の美を飾った。
文=田尻耕太郎(スポーツライター)



「自分の中では目いっぱいやってきた。充実感でいっぱいです」

 秋山幸二監督は最後まで笑顔を絶やさなかった。3年前の日本一は涙の胴上げ。今回はまるで違った。6年の集大成、秋山野球のすべてが凝縮された日本シリーズ。就任当時はこのような理想像を語っていた。

「打線は一番から九番まで打って、走って、守れる選手が並ぶこと」

 現役当時の秋山幸二選手が9人? と聞き返すと、イタズラっぽく笑ってみせた。ただ、それはあくまで理想。現実的には一人ひとりが自分の役割を果たし、どこからでも点が取れる。そしてムダな点を与えない。日本最大級のヤフオクドームが本拠地。とにかく「1点」にこだわった。

 象徴的なプレーは第3戦。二塁走者の吉村裕基が暴投(細川亨の三振振り逃げ)の間に一気にホームに生還したシーンだ。また、四番・李大浩は第2戦の本塁打も見事だったが、つなぎの意識でセンターを中心に打球を弾き返した。かつて現役時代にAK砲でコンビを組んだ、清原和博と重なる打撃スタイルに指揮官も表情を和ませた。そして第4戦、サヨナラの一発を放ったのは六番の中村晃。下位打線も相手に脅威を与えた。

 また、のびのび野球でつかんだ日本一だった。

「シーズンやクライマックスシリーズ(CS)は勝たなきゃいけない戦い。でも日本シリーズは違う。自分を全国にアピールしてほしい。勝ち負けの責任は俺がとる。みんなバーッと、思いきってやってくれ」

 今季はシーズン、CSとギリギリの戦いが続き、さらに監督の突然の退任発表。選手たちは心身ともに疲弊し切っていたが、秋山監督の言葉は選手たちの重圧を結束に変えた。それこそ今シリーズ最大の勝因だ。

 秋山監督は史上2人目の日本一を達成してユニフォームに別れを告げた監督となった(1954年、中日・天知俊一監督以来)。まだ52歳。しばしの充電を経て、またグラウンドに戻ってきてもらいたい。

秋山幸二の年度別監督成績
2009 3位 74勝65敗5分 .532 CSで敗退
2010 1位 76勝63敗5分 .547 CSで敗退
2011 1位 88勝46敗10分 .657 日本シリーズ優勝
2012 3位 67勝65敗12分 .508 CSで敗退
2013 4位 73勝69敗2分 .514
2014 1位 78勝60敗6分 .565 日本シリーズ優勝
通算 864試合 456勝368敗40分 .553'
特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング