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竜OB・井上一樹氏に聞く 中日躍進の要因と今後

 

シーズン開幕前、各評論家や解説者が中日に厳しい評価を下す中、堂々とセ・リーグ首位に挙げていた井上一樹氏。この健闘を予想できた着眼点と、残るシーズンで混セを抜け出すためのポイントを聞いた。
取材・構成=吉見淳司、写真=桜井ひとし



ホームで強い理由


 まず、僕がなぜ中日を首位にしたかというと、まだシーズンは序盤戦ですが、今年のセ・リーグは団子状態になると予想していたんです。「黒田博樹が復帰し、若い選手も多い広島は上位に来るかな」と思ったのですが、6球団をトータルで見たときに、巨人阪神にも決定的な強みが見えなかった。

 中日に関しては「上位に行く要素がないじゃないか」と言われるかもしれませんが、多くの評論家や解説者が5位、6位の予想をするということは、ほかの5球団もそうやって中日を甘く見るところがあるのかな、と思ったんです。

 セ・リーグだと中日や阪神のように広い球場をホームグラウンドとするチームは、投手力が勝敗を左右します。今後の順位次第で先発ローテーションの組み方も変わってくるでしょうが、各球団が主戦級の投手を巨人や阪神、広島に当ててくるようであれば、団子状態から中日がするすると抜け出していくんじゃないか、という予想だったんです。

 開幕の阪神戦(3月27日〜29日、京セラドーム)で3連敗してやっぱり今年は厳しいな、と見る向きも多かったでしょうが、ナゴヤドームで迎えた巨人戦(3月31日)で勝利。僕はこの試合で、「3連敗が逆に良い薬となったことで、上位をずっとうかがえるようなチャンスがあるかもしれない」と思ったんです。

 阪神戦の3タテも一方的な完敗ではなく、勝てた試合を落としてしまったところが大きかった(全試合が2点差以内。うち2試合がサヨナラ負け)。最後の詰めができなかっただけなので、しっかり反省できたのではないかと。

 3、4月のナゴヤドームでは12勝3敗。本拠地で強いというのは、地の利を生かした形のチームが出来ている証拠。それは今後も十分に生かすべきでしょう。ビジターで最低でも勝率5割をキープできれば、十分にチャンスは出てきます。

 サヨナラゲームが多いこともポイントの一つです(4月は月間5度のサヨナラ勝ち)。僕の過去の経験から考えると、サヨナラ勝ちが多いときは何かが起こる。最終回までに逃げ切るに越したことはありませんが、同点に追いつかれてもサヨナラに持っていける粘り強さがあるということですから、シーズン終盤でも何かを起こす予兆だとも考えられます。

 選手たちの中にもナゴヤドームで強いという意識はあるでしょう。「最終的には勝てるでしょ。ホームだし、サヨナラでしょ」という雰囲気があるのかもしれない。今の状態ならその意識を持つべきですよね。

 試合を決めたのもエルナンデス、小笠原道大、ルナ、ナニータ、平田良介。働いてもらわないと困る、という選手が一人で全部持っていくのではなく、ヒーローが固まらないのもいい。今年は面白いチームだと期待を持たせてくれますよね。

打線と投手のポイント


チームに明るい雰囲気をもたらす亀澤恭平



 打線では、コンスタントに働いてくれるルナが中心。平田もキャンプは二軍でしたが、いざ開幕してみるとライトに定着し、きっちりと打ってくれる。ルナにアドバイスを受けたエルナンデスも2年目で日本の投手に慣れてきており、打撃が向上しています。ナニータも持ち味の広角に打てる打撃を十分に見せているので、相手投手からすれば気の抜けない打線になっているように思いますね。

 投手陣に関しては僕も苦しいかと思っていましたが、バルデスが試合を作っている。なかなか勝ち投手にこそなっていませんが、中4日、中5日で投げてくれる投手が一人いると、すごく先発ローテーションをラクにしてくれる。吉見一起が好投をしても、1試合投げるごとに登録抹消し、10日間空いてしまうという事情があった中で、チームとしてはとても助かったでしょうね。

 しかし今後、バルデスが疲れてしまうことが絶対に出て来るはず。そのときに・・・

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