週刊ベースボールONLINE

特集・混セを勝つ!

ヤクルト・川端慎吾インタビュー「最後まで、食らいつく」

 

昨年の成績が偶然ではなかったことを、自らのバットで証明している。4月2日以降、打率が3割を下回ることはない。チーム状態にかかわらず打ち続ける姿は頼もしく、そのバットに引っ張られるように、チームは再び上昇気流に乗った。さわやかな笑顔の裏にある負けん気の強さ。川端慎吾が後半戦もチームをけん引する
※記録はすべて7月11日時点
取材・構成=阿部ちはる 写真=福地和男(インタビュー)、BBM

1本のヒットが体を軽くしてくれる


粘り強い戦いを続けるヤクルト。その理由を聞くと「昨年の今ごろとはチームの順位が違いますよね。ベンチの雰囲気もいいですよ」と笑顔を見せた。今季は過去に覚えがないというサヨナラ安打を放つなど、自身のバットが勝利につながる喜びも感じ、これまでにないほどの充実感を漂わせている。

──シーズンが開幕してからバットの調子もいいですね。

川端 そうですね。大きな波もなくずっと順調に維持できているかなと思いますね。

──その要因を教えてください。

川端 何回かバッティングの状態がヤバいなっていうときはあったんです。ですが、そういうときにポンってラッキーな内野安打が早めに出てくれたので、それが大きかったかなと。そういう状態のときはなんでもいいからヒットが出ると、体が軽くなるというか、次の打席からスッと打席の中で力が抜けるんですよね。

──ヤバいなというのはどういった状態なのでしょうか?

川端 自分の感覚ですけど、明らかにとらえたと思ったのが、全然とらえられていないとか。自分でも分かるくらい、上半身と下半身がバラバラだなとか。一緒にパンって回れている感覚がないんですよね。先に足が回ってから上体が後から回る、みたいな。そういう自分の中の感覚で「ああ、全然違うな」と。そういうときがあるんですよね。

──そういった状態のときには力が入ってしまう。

川端 まあ、やっぱりどうしても打ちたい、打ちたいっていう気持ちが強くなってしまいますよね。あとはすごく体が重く感じる。バットも重く感じますし。ですがヒットが出るとスッと軽くなるというか。ラクになるんです。

──今年は無安打の試合が非常に少ないですし(16回)、何日も続くということもないですね。

川端 3試合ノーヒットはないですね。コンスタントに打てています。

──現在の安打数は108でリーグトップ。2位の山田哲人選手に8本の差をつけています。

川端 ヒット数はあまり気にしていません。打率の方が気になります。

──打率でもずっとリーグの上位にいますね。

川端 なんとか維持できているので、最後までこのままいけたらいいなと思います。

──狙うは首位打者でしょうか。

川端 いやあ、狙って取れるものでもないですからね(苦笑)。いつ打てなくなるか分からないですから。それよりも、やっぱり試合に出続けることが大事かなと思います。

──4月24日の巨人戦では自身初のサヨナラ安打を放ちました。お立ち台での笑顔が印象的です。

川端 うれしかったですね。(サヨナラを打ったのは)初めてでしたし。

──今年のチームは延長戦で1度しか負けていません。昨年は逆に1度しか勝てていないのですが、昨年と比べてチームの違いは感じますか?

川端 やっぱりリリーフの人たちがすごく頑張ってくれているからじゃないですかね。去年と比べて点があんまり取られていないと思います。

──チームの失点286はリーグ3位です。

川端 延長になっても点を取られないので、巻き返せるぞ、という空気になっていると思います。

──昨年以上に自信を持って守備に就いているように見えますが、手応えなどは感じていますか?

川端 そんなに昨年と変わった感じはしないですけど、昨年よりももっと足をしっかり使ってやらなくてはいけないかなとは思いますね。

──そこを昨年よりも意識している。

川端 今年は芝が変わって、打球の勢いが昨年より死にますから、その分しっかり足を使ってプレーしないといけません。足を使えればもっとスムーズにファーストに送球できるでしょうし、ちょっと足が止まっていることが多いかなと思うので。もっともっと意識しないといけないですね。

──サードの守備はポジショニングと打球判断が大事だと、以前話していました。

川端 今年はポジショニングを自ら考えています。やってみてダメなら三木さん(肇作戦コーチ兼内野守備走塁コーチ)から指示があるので。まずは自分で考えてやろうかなと。

──今年はマウンドに行く機会が増えたように感じます。

川端 あまり意識はしていないですけどね。自分が何か思ったことがあったときに行くくらいで。ただ、当たり前の確認事項を言いに行くこともあります。ピッチャーは打者との勝負に集中しがちなので、そういうときは意識して行くようにしています。

4月24日の巨人戦で延長10回二死満塁で中前にサヨナラ打を放った川端は「2アウトで打つしかない状況だったのでラクな気持ちで打席に入れました」と振り返った(左から宮出隆自コーチ、川端、森岡良介上田剛史



見えた課題とつかみかけた手応え


たった1つの勝利または敗戦で順位が変動するセ・リーグ。だからこそ一喜一憂せずに冷静に状況を見極め、虎視眈々と抜け出すタイミングを狙っている。「自分が、自分がというタイプではない」と控えめなコメントが多い川端だが、言葉の端々に熱い闘志もにじませる。

──セ・リーグは混戦状態ですが、そこを抜け出すポイントはどういったところだと考えていますか?

川端 どのチームも抜け出さないんじゃないですか? バレンティンは帰って……来れるんですかね?(苦笑)。今はやっぱりケガ人が多いですからね。そのメンバーが早く戻ってきてくれれば、パッと抜け出せるチャンスはあると思います。まあでもずっとこのまま行きそうですよね。

──ですが最後は決めないといけません。

川端 そのときはそのときです(笑)。でもこの状態は続きそうなので、負けが続いても、あきらめずにやっていきたいです。

──今はケガ人が多いですが、ここを耐えれば。

川端 そうだと思います。何とか食らいついて、ズルズル連敗をしないようにしていきたいですね。

──チームの戦い方としては、どういったことを心がけていますか?

川端 やっぱり先に点を取ることですね。先に取られると苦しい試合展開になってしまうと思うので。

──先に点を取って攻めていきたい。

川端 この前半戦を見ていても、6回、7回までリードしていればだいたい勝てているので。やっぱり先に点を取って、勝っている状態で後ろのピッチャーにつなぐ。これが最大の勝ちパターンになっていると思います。7回くらいまで勝っている状態でいければ大丈夫だろうというような雰囲気はありますから。

──今後優勝を目指す上で、個人として大事なこととは。

川端 今年は左投手からあまり打てていないんですよ(打率.241、右投手は.369)。なので後半戦はそこをしっかり意識してやっていきたいですね。

──原因があるのでしょうか?

川端 外の真っすぐがめちゃくちゃ広く感じます。それで少し狂っちゃっているのかなと分析しているんですけど。あとは得点圏打率があまりよくないですね。

──現在.268です。

川端 ですよね。チャンスでしっかり結果を出せば、もっともっとチームが上に行けると思いますけどね。得点圏で打てば点が入ってチームが勢いづきますから。

──得点圏と左投手ですね。

川端 ですが7月8日の巨人戦(東京ドーム)で杉内(俊哉)さんから3本打てたので、少し左ピッチャーの感覚がつかめたのかな……。この前(6月30日から)の阪神との3連戦でも3人左投手が先発だったんですよ。左投手との対戦が続いて、「こうやったらヒットになる」というのがなんとなく分かってきたというか。だいぶ感覚がつかめてきて、そのあたりから少し良くなってきたかなと思いますけどね。

7月8日の巨人戦で杉内から一発を含む3安打を放った。左投手への対応も徐々に感覚をつかんできている



──オールスターがあり、間があいてしまいますが……。

川端 まあでも、1回つかみかけたものがあれば全然違うと思いますね。

──では後半戦に向けて目標を聞かせてください。

川端 この混戦状態から抜け出せればそれが一番いいですけど、もし抜け出せなくてもなんとか食らいついて、しがみついてでも上位のチームに負けないようにやっていきたいですね。もちろん優勝を目指していきます!

「故障者が戻ってくれば抜け出せるチャンスはある」と語る川端



PROFILE
かわばた・しんご●1987年10月16日生まれ。大阪府出身。185cm86kg。右投左打。市和歌山商高から06年高校生ドラフト3巡目でヤクルト入団。ルーキーイヤーから一軍出場を果たし11年からはスタメンに定着。昨季は規定打席に到達し初の打率3割超えを果たした。今季も開幕から好調を維持し、不動の三番・サードとしてチームをけん引している。今季成績は81試合330打数108安打3本塁打31打点2盗塁、打率.327(7月11日現在)。

ユーザープレゼント

川端慎吾選手の直筆サイン入りボールを抽選で2名様にプレゼントします。締め切りは7月27日です。下記の応募フォームからお申込みください。

当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。※ご応募いただいた個人情報は、当選者への発送、確認事項の連絡、企画の参考とさせていただく以外の目的には使用いたしません。
特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング