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特集・混セを勝つ!

コラム・望むのは73年の“下位も弱くない”ペナント

 

それにしても、セ・リーグの超低勝率のV争いは、何と表現すればいいのだろう。V争いというよりは、Bクラスからの脱出争いとでも言うべきか――。
文=大内隆雄

 1950年にスタートしたセ・リーグだが(当たり前だが、パ・リーグも同時スタート)、この65シーズンのペナントレースで、最も勝率の低い優勝は、いつで、どんな勝率だったかを調べてみると、ナルホド、だった。

 さて、読者の予想はどうだったでしょうか? 巨人のV9時代を知っている人なら「あの年だよ。阪神がドジを踏んでV9を阻止できなかった」と思い出したことだろう。そう、1973年の巨人の勝率なのです(.524)。



 阪神は、129試合目の中日戦(10月20日、中日)に勝つか引き分ければ優勝だったのに、選手がガチガチになり、中日の先発・星野仙一をとらえることができない。2対4で敗れてしまった。これで優勝決定は、130試合目の巨人戦(甲子園)に持ち込まれることになってしまった。巨人も130試合目。勝った方が優勝だ。優勝決定が両チームとも最終戦というのは、史上初のことだった。

 そういうワケで、これほど戦前から盛り上がったGT戦も久しぶりのことだったが、トラファンは2回でシラケてしまった。阪神の先発・上田二朗は初回に2失点、2回にも投手の高橋一三に三塁打される始末で33球でKO。試合は、巨人の9対0という一方的な結果に終わってしまった。怒った観客が、巨人ベンチに殺到して選手に殴りかかるひどい事態となったのは御承知のとおり。

 それはともかく、巨人の優勝勝率は.524で、これはセ・リーグ史上最低のV勝率となった。それどころか、1リーグ時代を含めても、最も低い優勝の勝率だった(パ・リーグの2シーズン制時代を除く)。

 低い優勝勝率は、巨人が弱いときに記録されるようで、2番目に低いのが92年の.531でこの年は野村克也監督のヤクルトが初V。3番目は94年の.538で、巨人は優勝したが、これは、あの“10.8”決戦で優勝が決まったシーズン。中日との史上初の同率同士での最終日優勝決定となった。優勝はどっちに転んでもおかしくなかった。

 さて、73年に戻ると、巨人の勝敗の中身を調べてみると、66勝60敗4分、勝率.524。勝ち越しはそれでも6つある。今季のセ・リーグの一時期のように、首位でも借金1というような異常な状態は、この年はなかった(もちろん交流戦はない時代)。

1973年は結局、巨人がペナントを制し、日本シリーズでも南海を破って9連覇を達成。果たして、今年はどうなるか?[写真=BBM]



 巨人は、4チームには勝ち越したが、中日(3位)には負け越し。これが10勝16敗だったので、大苦戦となったのである。阪神は、ヤクルト(4位)に9勝17敗だったのが響いた。3位となった中日は5位の大洋、6位の広島に負け越したのが痛かった。この年は、Bクラスチームが上位に対して大いに健闘したのである。最下位の広島でも60勝67敗3分、勝率.472で、負け越しはわずか7つ。試合数が違うし単純比較はできないが、昨年のセ・リーグで負け越し7つ以上は5位DeNA(.472)が8、6位ヤクルト(.426)が21。73年の大混戦模様が想像していただけると思う。下が強いとは言えなくても弱くはなかったから、この年のペナントレースは面白かった。広島が75年、初優勝を達成できたのは弱くはないチームが、2年で強くなったからである。

 今季のセ・リーグも、V勝率高低はどうでもいいから73年のような面白いペナントレースを展開してほしい。
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