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2015甲子園特集

高校野球100年目の主役はこの男たち!

 

山本龍河[智弁和歌山3年/外野手]


風格漂うスラッガー

やまもと・りゅうが●1997年10月4日生まれ。184cm88kg。右投左打



 ちょうど1年前の今ごろは、山本龍河にとってどん底の時期でもあった。夏の大会中に右手首を骨折し、バットすら満足に振れなかった。「野球をやることがすごくつらかった」。だが、ひと冬越え、体重が5キロ増えたことで打球に力強さが増した。本塁打も通算で43本を数え、三番打者らしい風格が漂う。逆方向へも強い打球を飛ばせるようになったスラッガーは「最後の夏は絶対に高嶋先生(監督)を甲子園へ」という目標だけを見つめていた。その目標をクリアし、次なる目標は全国制覇。実現するには山本の躍動は必要不可欠だ。(文=沢井史)

堀瑞輝[広島新庄2年/投手]


夢をかなえた強気の投球

ほり・みずき●1998年5月10日生まれ。広島県出身。175cm71kg。左投左打



天性の左のサイドスローだ。

「小学3年でピッチャーを始めたときからこの投げ方です。自分ではスリークォーターと思っていたんですが、ビデオを見たらサイドに近くて。あれって感じでした」

 上手投げのようなトップの位置から、左ヒジを柔らかくしならせる。右打者の懐をえぐるMAX140キロのクロスボールは超高校レベル。2年生ながら、今夏の広島大会は全6試合で先発。1点以上失ったゲームはない。決勝でも強気に内角を攻め、1失点で完投した。

「当てたらしょうがないという気持ちで内を突きました」

 広島新庄に入るきっかけは、2年前の夏の田口麗斗(巨人)の雄姿だ。瀬戸内高との決勝は延長15回引き分け、再試合は0対1で敗れた。.

「田口さんのピッチングをテレビで見てあこがれ、新庄に決めました」

 翌年にも左の好投手・山岡就也(国士舘)を擁し、センバツに初出場。だが、夏は決勝で敗退。まさに“3度目の正直”で頂点に立った。

「夏の甲子園は長年の新庄の夢だったので、叶えられてうれしい」

 1928年創部の野球部の87年間の悲願が、左腕に宿っている。(文=守田直樹)

河野竜生[鳴門2年/投手]


安定感抜群の2年生左腕

かわの・りゅうせい●1998年5月3日生まれ。徳島県出身。172cm72kg。左投左打



春先からできていた調子が悪い中でも試合をまとめることを、この夏もやってくれました」

 4年連続甲子園を決め、森脇稔監督がまず称えたのは絶対的信頼をおく2年生左腕・河野竜生である。

 徳島大会4試合に登板し、24回を投げ被安打10、奪三振23、与四死球3、暴投1。失点2も自責点は0。

 第1シードも城南を137球7安打6奪三振完封した決勝戦でも「速くなったなあ」とあるNPBスカウトを驚かせた最速140キロストレートに、「昨秋の四国大会・英明戦では緩いカーブを狙われた」反省から磨いてきたスライダー、ツーシームが次々と低めに決まった。

 その原動力は最速146キロ右腕の中山晶章、130キロ中盤の右サイド・尾崎修志、春季県大会で台頭した右翼手兼任の左腕・矢竹将弥といった同級生との切磋琢磨。「いつ1番を奪われるか分からない」危機感が、河野の意識を大きく変えた。

 かくして一回り大きくなった下半身で臨む2度目の聖地。「今までやってきたことに自信を持って投げたいです」。その先には兄・祐斗が計6回歌い上げた「輝くや我らが 鳴門の健児」初斉唱が待っている。(文=寺下友徳)

村上宗隆[九州学院1年/内野手]


肥後の和製ベーブ・ルース

むらかみ・むねたか●2000年2月2日生まれ。熊本県出身。185cm86kg。右投左打



九州学院の1年生四番・村上宗隆が鮮烈な「夏デビュー」を飾った。初戦の東稜戦の初回無死満塁。2ボール2ストライクからセンターへサク越えを放ち、夏の第1打席目が満塁弾。「ガムシャラでした」。顔はあどけなさの残る15歳だがパワフルな打撃は早くも注目を集める。

 185センチ86キロと1年生離れした体格を持ち、熊本大会は22打数9安打、打率.409でチーム最多の8打点をたたき出した。春の九州大会から四番が定位置だが「四番は気にしていない。来たボールに対して自分のスイングをするだけ」と伸び伸びと打ちまくった。

 同学年で早くもスターとして輝く早実の清宮幸太郎とは夏を前に、5月の練習試合で顔を合わせた。早くも夏の甲子園で再会することになるが「向こうの方が上。今は自分が負けているので3年間で追い越したい」と謙虚に話す。清宮の「和製ベーブ・ルース」にかけてついた「肥後のベーブ・ルース」のニックネームにも「そういうのはまだ早いです」と固辞した。「まず1勝が目標」。1年生四番として甲子園でも大暴れして、5年ぶりの夏の勝利を目指す。

比屋根雅也[興南2年/投手]


トルネード投法の再来

ひやね・まさや●1998年4月生まれ。沖縄県出身。173cm69kg。左投左打



体を反転させて打者に背中を見せてから、ズバンと右打者の内角に投げ込む。左腕のトルネードの比屋根雅也の姿を見ると、春夏連覇を果たした先輩エース・島袋洋奨(現ソフトバンク)を重ねてしまう。「参考にしたわけではないけど、投げやすいフォームにしたらひねる投げ方になった」と比屋根。5年前と同じく左腕トルネードが久々の甲子園へ導いた。

 春の九州大会では初戦の福岡工大城東に延長12回で敗れたものの18奪三振の快投を見せ「沖縄のドクターK」として人々に印象づけた。夏の沖縄大会では5試合40回2/3を投げて35奪三振。だが準々決勝の沖縄尚学戦は1失点で4奪三振。決勝の糸満戦は2失点で4奪三振。「三振より打たせて取る投球を心がけた。その方が自分も野手もラクなので」と最速136キロの直球は120キロ台にセーブ。制球重視でライバルを抑えて頂点をつかんだ。「比屋根は日ごとに大人の投球ができるようになった」と我喜屋優監督も2年生左腕の成長を頼もしく見つめる。再び優勝旗を沖縄に持ち帰ることを期待されるが「チームを勢いに乗せられる投球をしたい」。気負うことなく足元を見つめている。
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