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山崎康晃&筒香嘉智 チームの命運を握る投打のネオスター

 

山崎康晃[DeNA/投手]
新人ながら絶対的な存在


やまさき・やすあき●1992.10.2生まれ、東京都出身。177cm83kg。右投右打。帝京高から亜大を経て2015年ドラフト2位でDeNA入団。開幕からクローザーに起用され、防御率1点台と大活躍中。2015年成績45試合2勝2敗29セーブ43イニング54奪三振、8失点防御率1.67



 右翼席のファンが上下に揺れ始める。9回裏、3点以内のリード。本拠地・横浜スタジアムで定番化している光景だ。Zombie Nationの「Kernkraft400」。山崎康晃の登場曲に合わせて「ヤ・ス・ア・キ」の大合唱だ。リリーフカーを降り、小走りでマウンドへ。絶対的なストッパー不足に苦しんできたDeNA。弱点を補うどころか、強みに変える働きを見せてきた。ドラフト1位の即戦力右腕。大きなカベにぶつかることなく、順調にステップを踏んでいる。

 当初は先発ローテーションの一角と計算されていた。アピール不足によって競争から脱落し、3月のオープン戦中に二軍降格が検討された。亜大時代には大学日本代表でクローザー。中畑監督がここでの経験に注目し、思い切って抜てきしたのが転機となった。プロ初セーブは3月31日広島戦(横浜)。試合後のお立ち台では佐々木主浩氏を意識し「小さな大魔神になります」と約束した。9試合連続セーブ、5月の月間10セーブはいずれもプロ野球の新人記録。7月12日のヤクルト戦(神宮)は三上を抜き、球団の新人記録となる22セーブ目を挙げた。

 最大の武器はツーシームで、シンカーやフォークのような軌道を描いている。踏み出す足が極端にインステップするフォームから、右打者のヒザ元に食い込み、左打者にとっては外角へ逃げていく。42回で54個の高い奪三振率に加え、被打率は左右ともに2割以下(.182、.148。本塁打も6月9日の楽天戦(コボスタ宮城)でペーニャに許した1本だけにとどめている。

「1年目なので、何もかもが初めての経験。抑えても打たれても、自分の力に変えていかなきゃいけないと思っています」

 5月24日の阪神戦(横浜)では上本への頭部死球で危険球退場に。精神的なダメージも心配されたが、しっかりと立ち直ったあたりもさすがだ。巨人とヤクルトにはそれぞれ8試合、7試合でまだ無失点。7試合で防御率5.06と阪神戦の成績が改善されれば、鬼に金棒と言えるだろう。

 チーム状態が最高潮だった5月には7連投があった。シーズン終盤で体力面の不安はつきまとう。ただ、中畑監督は「山崎を無理使いしないことが一番。筒香と同じように、心中していい存在だと思っている」と断言。イニングまたぎや、ビハインドでの投入といった“リミッター解除”は、よほどの勝負所に限られそうだ。

 ここまで28セーブを積み重ね、中日・与田(32セーブ)の新人記録更新も時間の問題。「勘違いしないように。いろんな支えがあることを忘れないように」と謙虚な姿勢、積極的なファンサービスも見逃せない。日本代表候補にも選出。まだまだ、進化の途中だ。

筒香嘉智[DeNA/外野手]
チームの命運を握る男へ


つつごう・よしとも●1991.11.26生まれ、和歌山県出身。185cm97kg。右投左打。横浜高から2010年ドラフト1位で横浜(現DeNA)入団。今季は主将兼四番としてチームを統率している。2015年成績101試合120安17本塁打70打点0盗塁、打率.332



 充実一途であることは言うまでもない。6年目を迎えた筒香嘉智は、23歳の若さで主将を託された。

「勝利に直結する一打にこだわる。人間的にも信頼される四番になりたい」

 2月の宜野湾キャンプで松井秀喜氏と出会い、発言に重みが出てきた。開幕から四番に固定。セ・リーグだけでなく日本を代表する大砲に成長した。2004年の松中(ダイエー)以来となる三冠王を狙える好成績。3割、22本塁打、77打点のキャリアハイを更新するのは確実で、中畑監督からも「あいつがケガでいなくなったら、ウチは終わりと言っていい。気持ちとしては心中だよ」と絶大な信頼を置かれるまでになった。

 昨年114試合で47個だった四球は、97試合に出場した時点で50個に。7月31日の広島戦(横浜)では4打席連続四球を選んだ。かつてのように強引に一発を狙う姿はなく「打てない試合でも、何とか貢献しようと思っている」と強調。出塁率は4割を超えている。「我慢できるようになった」と高めのつり球や落ちる球に手を出すシーンは少なく、三振数も100個から60個へとペースダウン。左翼→中堅→右翼と逆方向から丁寧かつ強く打つ練習を徹底しており「確実性を上げたい。ヒットだけを狙う場合もある。チャンスを生かすのが仕事なので」と責任感をにじませている。

 さらに、忘れていけないのがメンタル面だろう。筒香本人が「一番変わったのは気持ちの部分だと思います」と自覚。これは松井氏によるものが大きい。打撃指導では「やっていることは間違いない」と太鼓判を押されたのと同時に「一喜一憂しないことが大切」と助言された。打って喜び過ぎず、打たなくても落ち込み過ぎない。これが習慣になった。「負けるのは悔しいけど、試合は待ってくれないので。どれだけいい顔をして、次の日のグラウンドに出てこられるかだと思います」。

 チームとしては6月に12連敗を経験。シーズンの長丁場を見据えたコメントには、風格すら漂っている。 内野からコンバートされ、2年目を迎えた外野守備も向上している。象徴的だったのは7月15日の巨人戦(横浜)。4回に右ヒジ上部に死球を受けながら強行出場し、7回には左翼からストライク返球で代走の切り札・鈴木尚を刺した。

 試合後には病院に直行。打撲した個所はみるみる内出血が広がり、曲げ伸ばしすると痛みが走った。「試合に出る限り、痛いかゆいは関係ない」。内に秘めた闘志が、並大抵ではないことも証明した。 唯一の心配は、5月24日の阪神戦(横浜)で負傷した右太もも裏の状態。万全ではなく、ここ最近は途中交代するケースも増えている。心技体。侍ジャパン・小久保監督も中軸として期待する男の前途は、果てしなく明るい。
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