ドラフト2位入団ながら、話題性では並み居る黄金ルーキーを上回っていた。京大史上初のプロ野球選手として注目を浴びた右腕はいま、ファームで静かにその牙を研いでいる。 取材・文=吉見淳司 写真=川口洋邦 注目のデビュー戦で悔しいKO劇
4月29日。
ロッテ対
西武戦が行われるQVCマリンには3万100人の大観衆が詰めかけていた。前売り券は4月の公式戦としてはロッテ史上初めて完売。ファンのお目当てはこの日に一軍初登板、初先発が予告されていた京大史上初のプロ野球選手だった。
異様な注目の中の初マウンド。約4カ月半前の出来事を、
田中英祐はこう振り返る。
「オープン戦では上で投げさせてもらいましたし、二軍でも悪くなかった(同日まで4試合に先発し、2勝0敗、防御率2.14)。『もう一度やったろう』という気持ちでした。早くチャンスをもらえたとは思いますけど、自分として早かったというわけではなかったですね」
だが、初の一軍マウンドはやはり、これまでとは勝手が違った。先頭打者から2連続で四球を与えるなど制球に苦しみ、初回に一挙4失点。3回までに5点を失い、マウンドから引きずり降ろされた。
「情報としてしっかりとしたものを持っていないと、ああいう雰囲気の中では簡単にガラガラと崩れてしまいますね」
今ならもっとうまくやれるのかもしれない。だが、当時は注目をはね返す術を知らなかった。その後、5月1日の
日本ハム戦(同)でも救援として3回を投げたが今度は4失点。翌日に登録を抹消され、一軍の舞台から遠ざかった。
それを境に二軍でも打ち込まれることが増え始めた・・・
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