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特集・新生スワローズ14年ぶりV

前回Vの指揮官・若松勉が見た今季の燕軍団

 

優勝を経験している選手は少ない。史上空前の大混戦を抜け出す条件として、多くの評論家が挙げていた“経験値”をモノともせず東京ヤクルトが14年ぶりにリーグ制覇を遂げた。その“大混セ”を制した要因とは何なのか。2001年に日本一に導いた指揮官・若松勉氏が今季の“ツバメ”の飛躍を語る。
取材・構成=鶴田成秀



投手陣の安定の陰に正捕手・中村の成長


 私の今季のヤクルトの予想順位は3位でした。なぜなら、投手陣の不安要素が大きかった。昨季のチーム打率は.279でリーグトップ。やはり問題は投手力でした。野球は点取りゲームだからこそ、いかに相手に得点を与えないかが大事になる。先発投手はエース・小川(泰弘)を中心に、ある程度は計算が立てられましたが、問題は中継ぎ陣でした。

 昨季の救援陣の防御率はリーグワーストの4.58。打線が奮起すれば勝てます。しかし、打線は水モノ。打てない試合も当然ある。打線が沈黙し、接戦になった場合の試合は落としてしまう、という予想でした。

 しかし、今季の救援陣の防御率はリーグトップの2.67と安定していました。今季からリリーフに回ったロマン、新加入のオンドルセク、そして秋吉(亮)、さらには球団新記録となる41セーブを挙げたバーネットが最終回をしっかり締めてくれたことが大きかった。破壊力のある打線は文句なし。1点でもリードして中盤から終盤へ試合を運べれば、勝ちが計算できた。すると、相手は焦りが生じ、投手の不用意な一球や守備のミスも生まれやすくなり、相手打線も空回りしやすくなる。救援陣の安定で、試合のペースを握りやすくなっていました。

 投手陣の頑張りは当然ですが、それをうまく引き出していたのが捕手の中村(悠平)です。昨オフに相川(亮二)が巨人へ移籍したことで、責任感も一段と強くなったのでしょう。「自分が引っ張っていく」という気持ちが、リードからも見て取れました。ピンチの場面でも、外角一辺倒の配球ではなく、時には内角へのストレートで攻める。シュートが武器の投手なら、内角へシュートを要求し、相手打者をのけぞらせるシーンも多く目につきました。時折見せる、そうした攻めのボールを要求することで、多少の外角へのボール球でも手を出してくれる。だから、各投手の武器となるボールが、より効果的に使えた。それは、投手の持ち味を存分に引き出すリードができていた、ということ。守りに入らず、強気の姿勢が好循環を招いたのです。

正捕手・中村[左]の成長がリーグVの要因。強気のリードで投手陣をけん引し、守護神・バーネットが球団新記録となる41セーブを挙げるなど、中継ぎ陣を再建させた[写真=高塩隆]



 優勝チームには、やはり良い捕手がいる。しかも、今年のように混戦状態で負けられない試合が続く中では、捕手の存在は大きい。セ6球団で最も多くマスクをかぶった捕手は中村。そのことだけでも、彼の成長とベンチからの信頼が感じ取れます・・・

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