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特集・日本一へ!再飛翔する燕戦士
館山昌平&大引啓次 来季の逆襲を誓う2人に密着

 

2015年シーズンはリーグ優勝し、日本シリーズ出場とチームは快進撃を見せた。自身のプレーで大きな貢献を果たした選手もいれば、不完全燃焼に終わった選手もいる。ここでは、持てるものを出し切れたとは言い切れない、来季の逆襲を誓う2人にスポットライトを当てた。

館山昌平・完全復活のその先へ




 この悔しさも、戦いの場に戻ってきたからこその実感だろうか。今季自身3度目のトミー・ジョン手術から奇跡的復活を果たした館山昌平。7月以降に挙げた6勝はチーム14年ぶりのリーグ優勝を大きく後押しし、巨人とのクライマックスシリーズ(CS)でも6回無失点の快投を演じた。34歳の右腕にとっては久々の充実したシーズンとなったが、最後に大きな屈辱を味わった。

 10月28日、神宮球場での日本シリーズ第4戦。ヤクルトは前夜に山田哲人の3本塁打などで快勝して敵地で2連敗した重い空気を一掃、レギュラーシーズンでも圧倒的な勝率を誇った本拠地で上昇機運が高まっていた。しかし、先発の館山が乗り切れない。1回に2四球から招いたピンチで先制点を許すと、3回も2四球が絡んで4失点。シーズンでもたびたび顔を出した制球難が命取りとなり「フォアボールが多過ぎました……」との広報を通じた短いコメントに屈辱感をにじませた。4対6で競り負けたヤクルトは次戦に完敗して終戦。結果的にシリーズの流れを左右する試合となった。

 レギュラーシーズン11試合に投げ、計62回1/3で出した四死球は40。周囲からは完全復活と言われたが、館山自身には課題が分かっていた。長期に及ぶリハビリは球の力強さを取り戻すことに重点を置いてきたため、フォームや制球に安定性を欠くのは必至だった。「今までの強い球を投げるリハビリから、確率を上げる次のステップに入った」。そう言ってマウンドの傾斜を逆に使っての投球練習や、軸足に体重をかけたステップの見直しなど「数年ぶりにやった練習」に取り組み始めたのは、8月下旬になってからだった。

 日本シリーズ後、館山はすぐに今季取得した海外FA権を行使しないことを公言した。「ケガで働けていない中で、球団から複数年契約を提示してもらった。それだけでお腹いっぱいです」。その上で「自分に見合った金額で、1年1年契約していきたい」と複数年契約を辞退し、また来年も勝負の年と位置づけて自らにムチを打つことを決めた。

「今年ヤクルトで優勝という良い思いをさせてもらった。来年はもっとチームに貢献できるように、このチームに残って頑張りたい」

 マウンドに戻ることが目標だった今季から、完全復活、さらにその先へ――。幾多の試練を越えてきた右腕には、新たな挑戦を迎えることが楽しそうにも映った。

大引啓次・自らを追いこみ、輝きを取り戻す




 日本一への夢が潰えた10月29日のソフトバンクとの日本シリーズ第5戦(神宮)。大引啓次は出番が訪れないまま、ベンチで今シーズンを終えた。

「満足いく成績ではなかったし、チームに迷惑をかけてしまった。来年はもう後がない。がけっぷちじゃないけど、もっとチームの力になれるようにしないといけない」

 日本ハムからフリーエージェント(FA)でヤクルトに加入した男は、不完全燃焼に終わった今季からの逆襲に燃えている。

 今季は開幕から打撃不振に陥ると、5月には左ワキ腹の肉離れで離脱。復帰後は復調したものの、最終的には打率.225、5本塁打、41打点に終わった。堅実な守備では持ち味を発揮したが、入団前の期待値からすると物足りなかった。

 来季への第一歩として、愛媛・松山で行われている秋季キャンプで精力的に練習に取り組んでいる。真中満監督が「今回は各個人が不調に終わった部分を強化してほしい」と話すように打撃に特化したメニューをこなしている。「振る力を身につけること」をテーマに、今キャンプでは宮出隆自打撃コーチと付きっ切りで、ティー打撃に多くの時間を割いている。今季は構えのときにトップの位置をしっかり決めることができず、年間を通して打撃フォームが安定しなかった。そのため、ティー打撃で自分の形でしっかり振り込むことで、体に染み込ませようとしている。

 また今オフは野球に集中できる環境も手に入れた。昨年のオフはFAでヤクルトに移籍するなど環境が変わったことで、例年よりもバットを振り込む量が激減。開幕からの打撃不振につながった。そこで今回は温暖なアメリカ・ハワイで自主トレを行うことを決めた。

「30歳を超えてきたし、暖かいところでしっかり汗をかいて体にキレを出したい。ロングティーや遠投で、体を大きく使えるようにしたい」

 日本ハム時代の後輩である杉谷拳士と一緒にやることが決まっており、ヤクルトから若手を連れて行くことも考えている。

「若い子とやることで僕自身も手を抜けなくなる。後輩たちの鑑となって、いい影響を与えられるようにしたい」とあえて自らにプレッシャーをかけるつもりだ。

 チームは14年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、心の底からは笑えなかった。本来の打撃を取り戻し、来季こそはチームの中心として輝く。
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