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オープン戦でのセンセーショナルな活躍で、あらためてその能力の高さを見せつけた楽天松井裕樹。投げるたびに評価を上げ続けるゴールデンルーキーは、果たして1年目から何勝を挙げるのか。注目度NO.1左腕の可能性に迫ってみたい。
写真=松村真行、小山真司

 衝撃のデビューから4戦目まで続けてきた無失点が途切れても、松井裕樹は笑顔を見せた。

 3月19日のDeNAとのオープン戦(横浜)の2回に、宮崎敏郎の右越え二塁打と野選で2失点。「点はいずれ取られるので、開幕前に取られておいて良かった。その後に立て直して、ゼロに抑えられたのは良かった」。

 オープン戦14イニング目にして初失点こそ喫したが、自己最速の150キロも計測。高校時代の思い出が詰まったマウンドで躍動した。

 高校NO.1左腕としてドラフト会議で5球団の競合を集めた前評判に違わない実力を発揮した。実戦デビューとなった2月23日の巨人戦(那覇)では2回完全投球。その後13イニング連続で無失点を続けるなど、オープン戦4試合16回2失点、防御率1.13は堂々の成績。

 星野仙一監督も「正直ここまでのボールを投げられるとは、いい意味で意外だった」とその才能に脱帽するしかなかった。

 オープン戦ではイニング数(16回)を上回る17三振を奪った。ソフトバンク攝津正中田賢一と並び、オープン戦12球団トップの数字だ。桐光学園高時代には2年夏の甲子園1回戦の対今治西高戦で10連続を含む1試合22奪三振の新記録を樹立。このとき、22三振のうち21三振を直球とスライダーで奪ったが、プロとして上がったマウンドでは当時から進化を遂げた姿があった。

 オープン戦17奪三振のうち、スライダーで奪ったのは3つだけ。半数以上の9三振はチェンジアップで奪った。三輪隆バッテリーコーチは「あれだけ腕を振っても、ボールがなかなか来ない」と絶賛する。

 代名詞でもある宝刀スライダーに注目が集まりがちだが、ロッテ清田育宏は対戦後に「腕の振りが全部一緒。チェンジアップがストライクゾーンに来るのがやっかい」と振り返った。

 すべての球種でプロの打者から三振を奪えるレベルにある。すでに開幕先発ローテーションの1枠は手にした。楽天の高卒新人としては07年の田中将大(現ヤンキース)以来、2人目の快挙となる。

 指揮官が「キャンプのときは、高校生なんか(ローテーションで)使いたくないとずっと思っていたけれど……」と明かすように、実力で勝ち取った1枠だ。

 今季からメジャー・リーグのヤンキースに移籍した田中は高卒1年目で11勝を挙げた。指揮官は田中以来の「金の卵」と期待を寄せる一方、ルーキー左腕も「田中投手のように無敗でシーズンを終われるようになりたい」とあこがれのエースの背中を追い求める。

 田中の1年目の開幕前の実戦は、5試合14回1/3で6失点だった。現時点では松井裕がその上を行く。入団前には「自分の中でやるべきことはあると思っているので(田中と)比較はできない」と語っていたが、徐々に自信も芽生えてきた。

「1勝して流れをつかんで、ローテーションを守り抜きたい」

 目標とする田中がマークした11勝はもちろん、66年の堀内恒夫(巨人)、99年の松坂大輔西武。現メッツ傘下)が持つドラフト制後の高卒ルーキー最多の16勝を超える可能性もこの黄金左腕は秘めている。

▲高卒ルーキーながら開幕先発ローテ入りを決めた松井裕樹。黄金左腕がいよいよ公式戦でそのベールを脱ぐ

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