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東日本大震災復興支援・巨人vs阪神OB戦

巨人・阪神OBが往年のプレー連発で大歓声!

 


11月16日、コボスタ宮城で巨人VS阪神OB戦が行われた。東日本大震災の復興支援のためのチャリティー試合だが、多くのファンが、往年の名選手たちのプレーに酔いしれた。そして、今回は松井秀喜氏が12年ぶりに巨人の「55」番のユニフォームを着てプレーし、4打数4安打の大暴れした。
取材・文=椎屋博幸 写真=桜井ひとし

巨人・阪神のライバルの歴史を作ったOBたち。試合前に王、吉田、小山の豪華メンバーが談笑



 錚々たるメンバーが集まった巨人と阪神のOB戦で松井秀喜は、ひときわ輝いていた。一振りで雰囲気を一変させるその打撃は、現役と同じだった。

 三番・右翼で先発に入った松井。スケジュールの都合で、試合1時間前に球場入り。OB先輩へのあいさつを済ませると、すぐにブルペンに入り、黙々とティー打撃を繰り返して試合に臨んだ。1回裏の第1打席の対戦相手は、今季現役を引退したばかりの阪神・久保田智之。初球から積極的にバットを振る姿に、満員に近い観客は歓声を上げた。

「すばらしい1日でした。日本野球の歴史を作った2球団。特別なチームだと思う。その中でプレーできてすごく楽しい時間でした」

 松井が楽しむ野球ができれば、球場自体も自然に盛り上がる。12年ぶりの巨人の「55」のユニフォームでのプレー。盛り上がるのは自然の流れだが、いまだに衰えぬ、バットスイングの速さ、打球の鋭さは健在だった。特に第2打席。永遠のライバル・遠山との対戦では、2ボール2ストライクから内角に入った甘い速球を強振し、右翼フェンスに叩きつけ二塁打とした。

2回の第2打席に右翼フェンス直撃の二塁打を放った松井。その豪快かつ、鋭い打球は現役時代を彷ふつとさせるものだった



「(感触はよかったからスタンドまで)行ったかな、と思ったけど……(やはり)現役じゃないんだなと思いましたね」

 また、1998年には13打席連続無安打に抑えられるなど苦戦した遠山との対決を懐かしむように「投げ方や球のキレは変わってなくて懐かしかった。ただ、お腹がね、僕もそうですけど(笑)」と振り返った。それでも終わってみれば4打数4安打。被災地のファンにその雄姿を見せた。

 今回のOB戦は東日本大震災復興支援が大きな目的だった。松井自身、3年半前の現役時代は多額の義援金を送った。「特別なゲーム。僕らのプレーを見て喜んでくださったら」とメッセージを送り、さらにこう付け加えた。

「つらさというのは、経験した人にしか分からないもの。皆さん頑張っていらっしゃるので、いい方向へ進むことを祈っています」

 現役のときはバットで気持ちを伝えてきた。現役を終えた今、行動で被災地を励ましている。だからこそ仙台で12年ぶりの巨人のユニフォーム「55」を着たのだ。

試合前に記念撮影に収まる巨人・阪神のOBたち。昔の名勝負を思い出させるメンバーがそろった



豪華対決にファンは酔いしれ




 2年ぶりとなる巨人VS阪神OB戦は好珍プレーあり、懐かしい対決ありで盛り上がった。当日は試合前に小雨が降り、あやしい雲行きになったが、「仙台の皆さんの思いが伝わり晴れにしてくれた」と王貞治巨人軍OB監督の言葉どおり、試合が始まると晴天となった。その中で始まった試合は随所に名勝負が繰り広げられた。

巨人ベンチは豪華絢爛。今回の指揮を執る王監督[左上]に原現巨人軍監督など、錚々たるメンバーが集まった



「江川(卓)と僕の対戦を楽しんでもらえてよかった。そういう対戦を喜んでもらえたことで、江川と出会えてよかったと、今日あらためて思った」

 80年代の巨人-阪神戦での名勝負、巨人の怪物・江川卓対ミスタータイガース・掛布雅之。仙台の地でもそれが4回に実現した。「見事に打たれましたね、現役のときのように」と苦笑いの江川だったが、掛布がレフトオーバーの二塁打を放ち、軍配は掛布に。

江川対掛布の勝負はレフトオーバーの二塁打で掛布に軍配が上がった



阪神OBも豪華だ。試合前の打撃練習では掛布氏(右)と田淵氏(左)が談笑



 一方、60年代後半から70年代にかけての名勝負、怪物左腕・江夏豊対世界のホームラン王の王貞治の対決。結果は王がセカンドゴロに終わったが、観客は大いに沸いた。

 また、スタメン発表のときには、「三番・ライト、松井」のコールで歓声が上がると、「四番・サード・原」のアナウンスに球場がさらにどっと沸いた。「松井の後ろを打つのは荷が重かった」と無安打に終わり苦笑いの原辰徳現巨人軍監督。

「サードを守っていると人工芝だったから、何か後楽園の巨人-阪神戦を思い出したね。そして打席に辰ちゃん(原監督)が立つと、その感じがよみがえってくるし、篠塚(和典)だとこの辺りに飛んでくるなと思ったり、自然とそうなる」

 掛布が回想したが、ほかのOBたちも現役当時を思い起こさせる打撃フォームや投球フォームを披露し、スタジアムを盛り上げた。「その場面になると瞬時に現役当時の姿になる。ただ、みんな体がついていかないな」と王監督。

王対江夏の往年の名勝負は、一本足のフラミンゴ打法にスタンドが湧いたが、二ゴロに倒れた



 野球少年たちからお年寄りの夫婦まで、詰めかけたほぼ満員の来場者たちが一つひとつのプレーを楽しみ、大成功でチャリティーマッチを終えた。
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