週刊ベースボールONLINE

開幕一軍入りへ猛チャージ

主力を脅かす江越、石崎ら若虎にクローズアップ!

 

球団創設80周年を迎えた阪神。大型補強もなく迎えた2015年シーズン。記念の年に優勝をするためには若手選手たちの底上げが必要だ。その中で、オープン戦で投打に若手が結果を残し始めている。さて、開幕一軍を手にする若虎たちは誰だ!?

外野の一角を脅かすドラ3・江越の長打力


 開幕一軍入りを決定づけるアーチだった。阪神のドラフト3位ルーキー・江越大賀は、3月3日に行われたソフトバンクとのオープン戦(丸亀)の2回無死一塁で、大隣からバックスクリーン左へ特大の1号2ランを放り込んだ。和田豊監督は「状態が良くなければ、あそこのコースは空振りかゴロになっていたはず。しっかりと下半身が使えている証拠だ」と分析。もともと高かった評価は、この一発で確固たるものとなった。

 沖縄・宜野座の一軍キャンプに抜てきされると、第2クールの2月9日に行われたシート打撃で、左翼席へ弾丸ライナーで突き刺す本塁打を放ち、持ち前の長打力を知らしめた。

 首脳陣がこの打席で特に注目したのが、カウント2ストライクからの3球目だ。ボールゾーンに落ちるフォークに、江越のバットが止まった。和田監督は「追い込まれたあとの変化球にバットが止まった。われわれはそこを見ている」と、会心の一打よりむしろ、この1球を高く評価した。

 25日間の長丁場のキャンプを無事、完走。疲れが出たのか、2月28日のオリックスとの練習試合(安芸)では、4打数無安打に終わった。3月1日の練習試合が雨天中止となると翌2日にかけて、和田監督のマンツーマン指導を受けながら、みっちりフォーム修正。開幕一軍をほぼ手中に収める一発が飛び出したのは、その翌日だった。

 阪神の外野はマートン大和福留孝介と、実績十分の3人が君臨している。しかし、指揮官は「左投手のときに(先発で)行くことはあるだろうし、誰かに何かあったときには、すぐにでも行けるぐらいのものを見せてくれている」と、今やレギュラー候補の一角としての位置づけだ。

昨年の日本シリーズで手玉に取られた大隣からバックスクリーン横へ本塁打を放ったドラ4・江越。久々の大砲候補として開幕一軍入りが確実だ



抜群の身体能力で一軍入りを狙う横田


 野手で光ったのは、江越だけではない。高知・安芸で二軍キャンプを過ごしていた高卒2年目外野手・横田慎太郎が、2月27日から一軍に合流した。186センチ、94キロの立派な体格を誇る。入団時から1年で体重は約10キロも増え、自主トレを視察に訪れた掛布雅之DCが「すごく良くなっている。打球音なんか、すごいぞ。松井の2年目よりいいんじゃないか」と、感嘆の声を発した。

 比較対象にしたのはなんと、巨人ヤンキースで四番を張ったあの松井秀喜氏だ。キャンプ中は、掛布DCが毎晩、チーム宿舎での夜間練習に密着し、素振りを徹底指導した。

 一軍デビュー戦となった2月28日のオリックスとの練習試合で4打数1安打。3月3日のソフトバンク戦でも、4回二死満塁で左前適時打を放つなど4打数1安打1打点。「三振を恐れず、小さくならないことを常に考えています」と、力いっぱいのスイングを心がけた結果だ。和田監督は横田の今後について「教育リーグで打席数も立たせながら」と、将来の猛虎打線を背負って立つ19歳にとって最適な起用法を模索中だ。

父・真之よりもスケールの大きな野球で結果を残し始めた横田。じっくりと育てていく



ドラ2・石崎と岩本が先発5、6番手に名乗り


 投手でもこの春、最も輝いたのはルーキーだった。3月3日のソフトバンク戦。プロ入り2度目の先発を果たしたドラフト2位・石崎剛は、昨年の日本一・ソフトバンク打線を5回6安打7奪三振無失点に封じた。

 当初は中継ぎとして期待されており、キャンプ中の紅白試合、練習試合は中継ぎでそれぞれ1回を投げた。しかし、キャンプ中盤になっても開幕先発ローテを託す6枚が見えてこなかった。そこで、右のスリークオーターから力強い真っすぐを投げるドラ2右腕に白羽の矢が立ったのだ。

 慣れないプロ生活に加え、キャンプ途中での役割変更。それでも「社会人のときから、先発、中継ぎ、抑え、いろいろやらせていただいていた。自分自身の希望はありません。任されたポジションで結果を残すのみ」と、気負いはなかった。

 初先発は同月22日の中日とのオープン戦(北谷)。3回を3安打1失点に抑えただけでなく、大きな収穫を得た試合だった。「変化球で打ち取ることを考えていた。合格点とまではいかないですが、良かったと思います」と石崎は試合後に語った。

 2月17日の練習試合、楽天戦(宜野座)は、1回3安打1失点と打ち込まれた。課題となっていたのは、変化球の精度。社会人時代から直球が主体で、スライダー、シュートなどが有効に決まらなかった。しかしこの日は、最速147キロの直球にスライダー、シュートをうまく交えて及第点。マスクをかぶった清水誉も「真っすぐも、シュートもよかった」と、新戦力の投球にうなずいた。

 3月3日のソフトバンク戦では5回を無失点。和田監督は「5回まできても、バテている感じはなかった」とスタミナ面の問題もなしと判断した。今後の投球内容次第では、1年目からいきなり開幕ローテに食い込むことも十分にありそうだ。

当初中継ぎとして起用されていたが、先発で結果を残し先発6番手入りに名乗りを挙げた石崎



 先発ではもう一人、岩本輝が光っている。2月17日の楽天との練習試合から結果を残し続けた。3月3日のソフトバンク戦こそ3回2/3で4安打3失点(自責1)だったが「甘い球でも詰まらせることができた」と、最速150キロの直球には勢いがあった。そして同8日の巨人戦(甲子園)の先発では、宿敵を相手に6回を4安打5奪三振無失点の好投で開幕先発ローテ入りを手繰り寄せた。

キャンプ中からしっかりと腕を振ることを心掛け、結果を残した岩本。「80球以上を見たい」という首脳陣のリクエストにも巨人相手に6回を0点でまとめ答えを出した



育成上がりの島本、ワンポイント左斬りへ


 昨年11月に育成選手から支配下選手となった高卒5年目・島本浩也も、中継ぎでの開幕一軍へ猛アピールを続けている。自身初の一軍キャンプに抜てきされると、2月8日まで現地で指導をした江夏豊臨時コーチから、MVPにあたる「江夏賞」を受賞。実戦が始まっても好投を続け、3月3日のソフトバンクとのオープン戦では9回二死から登板し、中村を遊ゴロに抑えて初セーブを挙げた。

育成からはい上がり5年目で支配下をつかみ取った島本。オープン戦でも結果を残し、開幕一軍までもつかみ取ろうとしている



 中西清起投手コーチは「ピンチで左打者が出てきたときに投げさせることもある」と、左のワンポイントとして計算しており、本人も「左打者をしっかり抑えることが大事だと思っている」と自身の役割を強く意識している。
HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング