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5年連続Bクラスに低迷していたオリックス躍進の理由は、指揮官による意識改革と選手たちのたゆまぬ努力にあった。3月6日に小社より発売となった森脇浩司監督の著書『微差は大差』。今回は、その発売を記念して森脇監督にインタビューを敢行。進化を続ける森脇オリックスの現在地とは―。
取材・構成=三橋祐子 写真=湯浅芳昭、佐藤真一、BBM
※本記事は2015年3月に公開した記事です

「まだ旅の道中」


──森脇監督は常々、変化なくして進歩なしとおっしゃっていますが、今年はチームにどのような変化をもたらそうと考えてらっしゃいますか。

森脇 2013年に監督に就任した際、選手たちにそれぞれが固定観念を持たずに変化しようという話をしました。そして、劇的に変化するんだという強い思いを持って取り組んでくれた結果、向かうべき方向に動き出すことができたと思っています。大切なのはここでひと息つかないこと。いい勝負はできましたが、決してゴールテープを切ったわけではありません。優勝という最終目標から逆算して、さらに準備を進めていく必要がある。いきなり大きな成果は得られませんので、1日1日最善を尽くしていくことが大切です。

 また、就任した際に思ったことは、失敗から学ぶことができる体質に変えていかなければ、前進はあり得ないということ。目を背けたくなる失敗もありますが、切り替えることが大事。そして、切り替える前にしっかりと分析し、原因追及をすることによって次に成功する確率を高めていく。そういうものを準備と言うんです。

 そして、選手たちを競争させることですね。当初は、停滞はおろか後退していても弾かれることがないチーム体質でした。それが、今では進歩しても弾かれてしまうような体質に変わってきました。向かうべき方向に向かい出したんです。でも、われわれはまだ旅の道中。こういうときこそ、動いてはいけない方向に動いてしまうことも十分に考えられるので、気を付けなければなりません。選手の自覚は以前よりも増してきましたし、彼らを信頼することに変わりはありませんが、このあたりからは今までよりもシビアに見ていく必要があるなと、そういう時期にようやく来たなと思っています。

ソフトバンクとの「10.2」決戦で流した悔し涙を胸に刻み2015年シーズンに挑む



監督とコーチ、監督と選手、森脇監督は日々コミュニケーションを大切にしている



──昨年のテーマは「さらに、一つになろう。」。その言葉どおり、昨年のオリックスは束になって戦っている印象を受けました。

森脇 勝ち続けるからこそ一丸になると言う人がいますけど、それは100%違いますよね。勝っていけばどんな組織だってまとまりを見せますから。去年なんかいい例で、一丸になったから勝ったと断言できます。去年は特に「お前たちはまだまだだぞ」と思い知らされた開幕戦だったと思うんですよ(2年連続延長サヨナラ負け)。

 でも、奮起を誓った以上は1年間やり通すんだと、心を一つにして戦い続けた。最後は2厘差でソフトバンクに敗れましたが、まずは2厘差の戦いにまで持っていけたことに何かを感じる必要があると思いますね。トップチームがやや失速したとはいえ、失敗から多くを学び1戦1戦ムダにすることなく最善を尽くしたことで、2厘差まで持っていくことができた。ゴールテープは切れなかったけれど、こうして頑張れば舞台に上がれることを教えてくれました。

 ただ、5ゲーム差であっても2厘差であっても負けは負け。その中で2厘の差が持つ意味を考える必要はありました。2厘差というのはより細かいことを徹底していく必要があるということなんです。準備段階において、今まで素通りしてきたことを今一度大事にしなければならないということだと思います。今回のキャンプでは、担当コーチには選手のレベルを上げるためにそれぞれ動いてもらいましたが、僕からの注文は2つだけ。

 一つは、必要な準備をしてグラウンドに入ること。もう一つは、1球1球丁寧に扱うこと。日々の積み重ねが試合で出ます。今日を大事にできない人が明日を大事にできないのと一緒で、1戦1戦大事に戦っていくことでそれが次につながっていく。そういう意味で、去年は「1戦1戦」が自然と合言葉になっていましたが、それを聞いて頼もしいなと感じていました。

──2厘の差が、最終的に1位と2位の差に。監督の著書のタイトル「微差は大差」にもつながりますね。

森脇 まさにそうでした。チーム力に差があっても、ゲーム差というのは最初からつくわけではありません。1戦1戦こなしていく中で差が徐々についていくものです。2厘差というのはわずかな差かもしれませんが、1位と2位という差で考えれば大きな差。微差は大差なんです。
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