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2014-2017 日本代表戦記

第4回「ニッポンの四番打者」

 

「ここだけは動かす気はないですから」。2013年のチーム立ち上げ以来、小久保裕紀監督が四番に指名し続けているのが中田翔(日本ハム)だ。しかし、欧州代表戦で、右の大砲を脅かす存在が現れた。
文=坂本匠[本誌]、写真=小山真司

 13年の小久保ジャパン立ち上げから、今回の欧州代表戦まで全12試合で四番を任されているのが中田翔だ。しかもただ1人全試合フルイニング出場中。かねてより指揮官は右の長距離砲で自身とも重なる部分の多い「中田こそが適任」とし、その姿勢を崩すことはなかった。13年の台湾遠征では、3試合2安打本塁打ゼロの打点ゼロ。昨秋の日米野球では勝ち越しを決めた第3戦で2点本塁打を放ったものの、この1本を含めて長打は2、6試合で3打点に終わり、周囲から疑問の声が上がり始めても、だ。

 しかし、3月10日、第1戦の試合後、公式記者会見の席上で、指揮官の口から気になる発言が飛び出した。

 この日、無安打に終わった四番打者について質問が及ぶと、「四番は変えません」とした上で、逆転劇の口火を切る適時二塁打を放った五番・筒香嘉智について触れ、「状態が本当に良い。もし中田に(ケガなど)何かあれば、彼の四番もあり得る」と初めて中田以外の四番打者の可能性について、言及したのだ。

真剣な眼差しでバットを振り込む筒香嘉智。日本の四番有力候補の1人だ



 筒香は日米野球からチームに加わった(中村晃の辞退による追加招集だった!)、23歳の若き左の長距離打者。プロのキャリアでは中田に遠く及ばないものの、昨季打率.300、22本塁打、77打点と頭角を現し、今季はDeNA中畑清監督によって主将に指名されたばかりか、「全試合四番」を予告されている。先の日米野球でも第3戦からの登場で、出場4試合のうち親善試合(那覇)を除く3試合で安打を放っていた。今大会では中田の後の五番で、主砲と同じくフルイニング出場。その起用法からも、プライオリティーの高まりを見ることができる。そんな小久保監督の発言を受けて、実直な筒香に“日本の四番”について聞いた。

「いえ、四番とまでは考えていないです。成績を残して、(日本代表に)また呼んでもらえるように……」

 ここで、近くで素振りをしていた坂本勇人から「ちゃんと答えろよ(笑)」と、ちゃちゃが入る。

 ハニカミながらも筒香は「まず今年1年、DeNAで実績を残して、いつか(侍ジャパンの四番を)狙えればいいかな、という感じです」。

 一方、今大会1安打に終わった中田は危機感を募らせていた。

「不甲斐ない結果。自分はまだ四番とは思っていません。四番らしくなったと言ってもらえるように、この1年、しっかりやりたい」

 そんな主砲の思いを知ってか知らずか、第2戦終了後の総括会見で小久保監督は「四番とは、あいつが打てなかったらしょうがない、とチームメートもファンも納得する存在」とあらためて考えを示した。四番・中田、五番・筒香は確かに理想的な組み合わせだ。しかし……。果たして、今秋プレミア12で日本をけん引する四番は誰になるのだろうか。
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