東北楽天ゴールデンイーグルス 待たれる新助っ人の復調
新体制の楽天が荒波の中を滑り出した。昨秋に就任して以来、
大久保博元監督は「オフ撤廃」や「全選手のランク付け」、さらには「中継ぎのターンオーバー制」など、矢継ぎ早に新機軸を打ち出してきた。しかし、それらのアイデアも現時点では結果に直結していない。
4月9日終了時点で3勝5敗1分。前年最下位からの下克上を狙うチームはスタートダッシュに失敗し、指揮官も「全責任は自分にある」と繰り返すしかない状況になっている。
最大の誤算と言えるのが、攻撃陣の中核を担うべき助っ人トリオの不振だ。
オリックスから移籍のペーニャは4月5日まで打点ゼロ。開幕戦本塁打と華々しいデビューを飾った
ウィーラーも定まらない起用法にリズムが整わないのか、打率は1割台に低迷。メジャー61本塁打の実績を誇り、推定年俸2億5000万円と期待の高かった
サンチェスに至っては、コボスタ宮城での初戦となった3月31日の
西武戦で4打席連続三振。早々とファームでの再調整を命じられた。
開幕から苦しい戦いが続く大久保楽天。期待された新助っ人のサンチェス[背番号3]も不振で3月31日に二軍降格となった
打線の軸と期待された外国人が得点源となっていない原因は、必ずしも日本野球への適応力や調整不足ということではない。開幕5試合のスタメンで同じ打順を通したのは四番のペーニャだけ。日替わり打線はチーム全体の攻撃リズムをも崩している。各選手は役割をこなそうと必死だが、なかなか「点」が「線」になっていない。テーマに掲げた「超機動力」は12盗塁で失敗は0だが、リスクを冒した仕掛けが1点にも結びついていないのも現実だ。
先発陣は
則本昂大頼みの印象が強く、やはり、前途は多難と言わざるを得ない。ただ、1年生監督はポジティブな姿勢を失っていない「最初からうまくいくよりも、苦しんで、苦しんで勝っていく方がいい。われわれは、もう一度、立ち上がっていく」。だからといって、ドタバタと動き回る必要もない。開幕前の下馬評では最下位の本命。昨季よりも下がることはないのだから開き直ってどっしり構えることもできるはず。
一喜一憂せず、まずはチーム全体を落ち着けることが最優先になる。
中日ドラゴンズ 巧みな用兵でリカバリーに成功
開幕前の順位予想では最下位に置く声も多く、苦しいシーズンが予想された中日。開幕カードの
阪神戦(京セラドーム)で35年ぶりとなる開幕3タテを食らうとその声はさらに大きくなった。
和田一浩、
岩瀬仁紀と投打の頼れるベテランが調整遅れのために一軍合流できず、
森野将彦も3戦目に相手送球を右手親指に受けて骨折。昨季は故障者続出の8月に悪夢の月間20敗を喫していただけに、このまま泥沼にはまってしまう可能性は高かった。
だが、指揮官として2年目を迎えた
谷繁元信監督兼選手は冷静だった。
「昨年よりも選手層は増している。故障者が出たとしても、誰かが穴を埋められる状態に持って行きたい」
春季キャンプ中からそう唱え続け、“監督”としての時間を多く取って選手に目を配っていたのも昨年の反省から。本拠地・ナゴヤドームに帰り、仕切り直しとなった
巨人戦でさっそくその手腕が発揮された。
3月31日の初戦では、オープン戦で4本塁打を放っていた9年目の
福田永将を五番・ファーストで初スタメンに抜てき。福田はその期待に応えて3安打1本塁打2打点と活躍し、チームに今季初勝利を呼び込んだ。翌日にはトミー・ジョン手術からの復活を目指す
吉見一起が6回を2安打無失点に抑えると、
ソフトバンクを自由契約となり、今季にチームに加わったばかりの
亀澤恭平が初回に決勝打となる左前タイムリーを放って9対0と快勝。3戦目も福田が2ランを放つなど、5対3で競り勝ち、昨季のリーグ優勝チームを3タテして借金を完済した。
広島を本拠地に迎えた開幕3カード目にも勢いは止まらない。初戦をエルナンデスのサヨナラ打で劇的な勝利。2戦目はこちらも戦力外を経て入団した
八木智哉が
黒田博樹に投げ勝ち、982日ぶりの白星をつかんだ。3戦目は代打・
小笠原道大がサヨナラ打で6連勝。4月9日終了時点で7勝5敗と見事にリカバリーに成功した。
テスト入団から開幕ローテをつかみ、復活勝利を挙げた八木
福田、吉見、亀澤、八木……日替わりヒーローがチームに勢いをもたらしているが、その裏には昨季の苦い経験を生かした、谷繁監督兼選手の選手起用がある。