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早実・清宮幸太郎 タダ者ではないスーパー1年生の素顔

 

4月18日、春季東京都大会準々決勝(対関東一)。4点を追う6回表に2点差とし、なおも一死二、三塁から三番・清宮が中堅右への起死回生の逆転3ラン。推定130メートル弾で早実は初めてリードを奪ったものの、最後は逆転負け(11対18)を喫した


王貞治荒木大輔斎藤佑樹と国民的スターを輩出してきた早実に、スーパー1年生が鮮烈デビューした。日本ラグビー界の名将・清宮克幸(トップリーグ・ヤマハ発動機監督)を父に持つ清宮幸太郎である。入学式から3日後に「三番・一塁」で東京都大会3回戦に初出場すると、3戦目の準々決勝(対関東一)では、公式戦13打席目で待望の初本塁打が飛び出した。夏の全国選手権大会が始まって100年の節目に、新怪物スラッガーが伝説を刻もうとしている。
文=岡本朋祐、写真=斎藤豊

春では異例の大フィーバー


 入学式から3日後には「三番・一塁」で先発出場。この高校デビュー戦(対駒大高・3回戦)で勝ち越し打、そして4回戦(対早大学院)でも先制二塁打を含む3安打を放ちながら、試合後の表情は晴れなかった。

「納得できるのは本塁打。やっぱりダメですね(苦笑)」

 もちろん、チームの勝利に貢献することを大前提とした発言だが、15歳とは思えない風格がある。さらには「1年生だからと言って物怖じせず、上級生を引っ張っていきたい」と胸を張った。

 日本ラグビー界の名将・清宮克幸(トップリーグ・ヤマハ発動機監督)を父に持つ清宮幸太郎。王貞治が甲子園優勝投手となったのは2年春。荒木大輔の“大ちゃんブーム”が巻き起こったのは1年夏。斎藤佑樹の“ハンカチ王子”が社会現象となったのは3年夏。清宮は1年春。超異例と言えるフィーバーにも「これからこういう環境でやっていかないといけない人間だと分かっているので、大丈夫です」と言った。脚光を浴びる現実を、宿命として受け止めているのだからやはり、タダ者ではない。

 4月18日。デビュー3戦目(対関東一・準々決勝)。ついにそのときがきた。神宮第二球場は定員(5600人)に迫る5500人の大観衆。2階席にもビッシリ埋まり、報道陣もテレビカメラ7台を含む約50人が詰め掛け、普段は開放しない三塁カメラ席も開けられる“清宮シフト”が敷かれた。


この日の神宮第二球場は“清宮効果”により定員の5600人に迫る5500人の大観衆。東京都高野連関係者も「春でこんなに入ることはない」と目を丸くしていた。報道陣もテレビカメラ7台を含め約50人が詰め掛け、普段は開放しないという三塁カメラ席も“特例”として開けられた


 東京都高野連関係者も「夏、秋はあっても春でこんなに入ることはない」と目を丸くさせれば試合中、連盟ホームページのアクセスも集中しダウン寸前だったというから驚きだ。

試合前のルーティーンを重要視


スタンドでは父・克幸さんが3、4回戦に続いて3試合連続観戦。この日の朝も、自宅の地下室で打撃練習を積んでから試合に臨んだという。二人三脚の取り組みが実を結んだ


 一流アスリートのDNAを持つ清宮は、ルーティーンも大事にする。試合当日の朝は自宅で“アーリーワーク”。この日も1時間、地下室にある特設練習場で父に投げてもらい打撃を行った。左ヒザの使い方など名将からの助言は技術指導にまで及ぶ。シートノックを終えた試合直前には、木製バットで素振りを行う。トップバランスのタイプで、ヘッドを利かせたスイングを意識させるのだ。

 観衆のお目当てはもちろん清宮。第1打席、第2打席と右飛。2打席目は良い角度で上がると、柵越えを期待するスタンドは思わずどよめいた。

 1対5で迎えた5回表。早実は2点をかえし、一死二、三塁で清宮を迎えた。過去2打席は2球目のファーストストライクを強振。初球の変化球のボール球を見逃し「次は変化球はないかな」と、真っすぐ一本に絞る。狙い澄ました内角の直球をたたくと、打球はバックスクリーン右へ一直線。ドラフト候補の関東一の中堅手・オコエ瑠偉(3年)も「噂通りの怪物でした」と、一歩動いたところで諦める推定130メートル弾だった。清宮の逆転3ランも早実投手陣が打ち込まれ、11対18で敗退した。清宮は試合後に開口一番「負けたことが一番、悔しい」と言った。

6対5と勝ち越しのホームを踏む前には、大きくジャンプして喜びを表現。まだあどけなさ残る15歳だが、パワーは松井秀喜級との声もある


高校初本塁打が勝利に結びつかず、開口一番「負けたことが一番悔しい」と話すも「春の大会で1本出たのは大きい」とホッとした表情を見せた


 ただ。13席目にして初本塁打に「春の大会で1本出たのは大きい」と白い歯を見せた。この日も一連のフィーバーについて問われたが「重圧?意識しないこともないが、楽しい。付き物だと思っている」と大物ぶりを発揮。「目標は高い方が良いので、80本くらいはいきたい」。新怪物には、スターの資質が詰まっている。

PROFILE
きよみや・こうたろう●右投左打。184cm97kg。1999年5月25日生まれ。東京都出身。早実初等部(東京北砂リトル)-早実中等部(東京北砂リトル、調布シニア)-早実高等部(15年〜)
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