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“プレミア12” 初制覇への戦い

前田健太 新世代が台頭も侍のエースはやはりこの男

 

日本ハム大谷翔平阪神藤浪晋太郎と新世代の投手が台頭する中で、JAPAN投手陣の軸とならなければならない男。前回、13年のWBCでは大会の公式ベストナインにも選出された。世界との距離を測りながら成長を続ける背番号18は、投手としてまだ上昇過程にある。
写真=川口洋邦



 7月10日の中日戦(ナゴヤドーム)に先発して、7回7安打1死球で2失点。前田健太は8勝目を手にしてオールスターの折り返しを迎えた。驚かされるのは、ここまで16試合に登板して15試合でクオリティースタートを決めていること。ただ、それは背番号18を背負う者としての最低限の仕事。エースの責任はそこにはないと心得ている。

「試合をつくることを求められている立場ではないんで。とにかく勝たないと意味はありません」

 1991年以来のリーグ制覇を本気で目指すだけの陣容が整った広島。そのチームをけん引する立場として、勝利あるのみ。今季、使用するグラブの手入れ部には18個の星を刺繍した。「一応の目標ですかね」。背番号18にあやかった一つの目安だと本人は軽い言葉を口にするが、心に秘めた思いを想像させる。

 2013年オフ、契約更改の席でメジャー・リーグ挑戦の意志を直訴した。前田が海外移籍も可能なフリーエージェント権を獲得するのは早くても17年のシーズン中。「チームに恩返しできる形がベスト」と、球団に入札金が入るポスティングシステムを利用しての移籍を視野に入れている。昨オフも直談判はしたが、時期尚早と見送られた。求められたのは「気運」だ。田中将大(ヤンキース)が入札制度で海を渡る前の13年シーズンに24勝無敗という圧倒的な成績を残し、チームを日本一に導いたように、誰もが納得するものを残す必要がある。その意味での「18」。その先にリーグ優勝があり、日本一も近づく。そして自身の節目として、通算100勝に到達する。

 そもそも、世界との距離を測るきっかけになったのが13年のWBCだった。3試合に投げて2勝1敗、防御率0.80。15イニングで18個の三振を奪い、大会の公式ベストナインに選出された。

「初めての国際大会でそれなりの結果が出せて、気持ちが強くなった部分はある」

 その気持ちが進化の糧となっていることは間違いない。

世界を意識する一つの契機となった13年のWBC。ベストナインに選出された一方で、準決勝敗退の悔しさを知る[写真=毛受亮介]



 10年から5年連続2ケタ勝利を継続中で通算防御率は2.40。12球団屈指の安定感は、大谷翔平(日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)ら若い世代が台頭しているといっても、侍ジャパンのエース格にふさわしい。今秋、再び世界との真剣勝負のマウンドに立つ。2年半前とその距離はどう変わっているだろうか。

PROFILE
まえだ・けんた●1988年4月11日生まれ。大阪府出身。182cm81kg 。右投右打。PL学園高から07年、高校生ドラフト1巡目で広島入団。1年間はファームでじっくりと鍛えられ、2年目の08年に一軍デビュー。9勝2敗の成績を残す。3年目には先発ローテーションに定着し、4年目の10年から5年連続2ケタ勝利。主なタイトルは沢村賞(10年)、最多勝(10年)、最優秀防御率(10、12、13年)、最多奪三振(10、11年)。13年WBCで大会公式ベストナインに選出。
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