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大瀬良大地インタビュー

 

本来の居場所で結果を残せず、与えられた新しい役割。当初は戸惑い、苦しんだが、そこは新しい気づきを授けてくれる場所だった。24歳の右腕は、チームを勝利に結び付ける重要なポジションを任されている。
取材・構成=菊池仁志、写真=BBM



消してしまった黒田の白星


 昨季、1年目ながら先発ローテーションを守り抜き、10勝を挙げてセ・リーグ新人王に輝いた右腕が2年目のカベにぶち当たっていた。開幕から9試合に先発して防御率は3.43、クオリティースタートを4度マークしたにもかかわらず勝ち星はわずかに1。6月上旬、広島首脳陣はついに、将来のエースと期待する大器のリリーフ起用を決断する。

――6月10日の西武戦(西武プリンス)から中継ぎ起用が続きます。当初と比べて安定感が増してきていますね。

大瀬良 去年、1年間ローテーションで回らせてもらって、今年も6月頭まで先発での調整でした。リリーフの動きは正直、ゼロから学ばないといけませんでした。戸惑いもあって最初はうまくいかない結果ばかりだったんですけど、そういう経験も含めて今に生きていますね。

――転向直後、4試合中3試合で失点しました。うまくいかなかった理由はどこにあったのでしょうか。

大瀬良 中継ぎは、気持ちの持ち方とか考え方とか責任感とか、先発とはまるっきり違うものだと解釈してやっていたところがありました。流れを切らないために一人の走者も出しちゃいけないって、自分を追い込むような心の持ち方をしていたんです。自分で自分を精神的に苦しくしていたのが良くありませんでした。

――転機となったのは?

大瀬良 6月の長野での阪神戦(23日)で黒田(博樹)さんの勝ちを消してしまいました。それを謝りに行ったんですけど、「気にするな。これからもああいう経験をすることがあるだろうし、これを生かして次にいいピッチングができるように、また明日から頑張れ」と言っていただいたんです。そこから考え方を見つめ直そうと思いました。とにかく、任されたイニングをゼロで抑えること。それに集中できるようになってからはマウンド上でも状況判断しながら試合を進めていけるようになりました。黒田さんにかけてもらった言葉はすごく大きいものでした。



――前に投げた投手の思いまで背負うなど、余計なものを排除してマウンドに上がれるようになった。

大瀬良 そうですね。考え過ぎないように。もちろん、そういう気持ちは今もありますけど、試合の中で僕が任されているイニングを抑えられるように、全うしようという気持ちです。今は仮にランナーを出しても、ゼロに抑えることができればOKです。リリーフに回ったときと比べて、心の持ち方は大きく変わりました。

――その心の持ち方は、先発時とはまた違うのでしょうか。

大瀬良 リリーフになってすぐのころは、気持ちを最高潮に、限界まで上げてマウンドに行っていたんですけど、結局それが空回りしてしまっていたんですよね。先発のときは最初から試合に入り過ぎないようにしていたんですが、リリーフでもそのときのように準備だけはしっかりして、気持ちは上げずに行くようにしました。マウンドに上がって5球の投球練習の間に打順の確認など、やることをやってから試合に集中するようにしています。

――先発と変わらない気持ちでマウンドに上がっている。

大瀬良 そこも、まるっきり別物だと考えていたんですよね・・・

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