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9/12 阪神対広島 誤審問題

ビデオ判定が誤りだった!三塁打判定、実は本塁打

 

全員が納得する環境作りを望む!


オーナー会議後に行われた会見で頭を下げて謝罪した熊崎コミッショナー[写真=内田孝治]



 大混戦のセ・リーグで、極めて異例の事態が起こった。日本野球機構(NPB)は9月14日、甲子園球場で12日に行われた阪神広島20回戦でビデオ判定の結果、インプレーで三塁打と判定された広島・田中広輔の打球が、フェンスを越えた本塁打の誤りだったと発表した。試合は2対2の引き分けで成立しているため、記録の訂正は行われない。

 2010年に導入されたビデオ判定でNPBが誤審を認めるのは初めてで、熊崎勝彦コミッショナーは14日のオーナー会議後の会見で「断じてあってはならないこと。深く、深くお詫び申し上げざるを得ない。再発防止に向けて徹底的に検証するように指示をした」と頭を下げて謝罪した。

 田中の打球は、延長12回、中堅フェンス際で大きく跳ね返り、グラウンドに戻った。審判団はビデオ判定でフェンスを越えていないと判定。だが、怒りの収まらない広島の求めで、当該審判員とセ・リーグの杵渕和秀統括、NPBの友寄正人審判長が映像を再検証した結果、打球はフェンスを越え、観客席側にせり出した進入防止用のワイヤーに当たって跳ね返ったと判断した。杵渕統括は「まさかそんなところに跳ね返らないだろう、という審判員の思い込みが一番の原因。先入観を持たずにビデオ判定することを全審判員に徹底する」と陳謝した。

 今回の誤審は、NPBのビデオ判定の欠陥を露呈した。メジャー・リーグ機構(MLB)では映像をニューヨークに設置しているセンターに集約し、常駐する審判員が確認した上で、球場の審判員に判断を伝えている。MLBはこの設備に数十億円規模の投資を行っている。だが、NPBには全試合の映像を一括で管理する施設はなく、テレビ中継局の協力を受け、モニター機器を審判員控室に設置し、現場の審判員が確認するため、第三者による複数のチェックは働かない。“思い込み”が起こりやすい環境の中で、審判員だけに責任を求めるのは酷ともいえる。

 今回の誤審は混戦の上位の戦いで起こり、優勝の行方やクライマックスシリーズ(CS)進出に影響する可能性がある。結果的に広島は延長12回の誤審後に得点できず、試合は引き分けに終わった。

 当事者の田中は「人がやることだし、しょうがない。僕が本塁打を打つ、打たないよりもチームが勝てなかったのが痛かった」とし、広島の松田元オーナーは謝罪を受け、「頭にはくるが、しょうがない。審判がこれからどういう形で改良していくかが重要だ」と語った。鈴木清明球団本部長は「いまはテレビを見てみんな知っていて、グラウンドにいる人だけ分からないという時代。審判の手助けになるように環境をつくっていかないと」と議論を求めた。

 ファンの反響は大きかった。NPBには、誤審発表後の2日間で苦情や抗議の電話がおよそ100件寄せられ、その多くが広島の不利の是正を求める声だったという。NPBのビデオ判定は現在、12球団の本拠地とほっともっとフィールド神戸のみで行われ、審判員が必要と認めた場合、本塁打か否か、外野のフェンス際の打球が直接捕球されたかの確認に限っている。

 15日に開かれた、NPBと日本プロ野球選手会との事務折衝では、選手会が当該試合の審判員以外の第三者による映像確認などの検討を求め、NPB側は地方球場への拡大にも前向きな姿勢を見せた。今回の大きなミスを契機とし、監督、コーチや選手、そして何よりもファンが納得できる環境作りが進むことを期待したい。
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